エモーショナルの向こう側

思いの丈をぶつけに来ます

私と金子と自意識と~2019年シーズンを終えて~

突然だが私は埼玉西武ライオンズのファンだ。

ファン歴は十数年。
新聞で前日の結果を知るしかなかった中学時代。
年に一度だけ交流戦を観に行くことが楽しみだった高校時代。
初めて自力で本拠地に観戦に行った大学時代。
そしてパ・リーグtvを契約し毎日中継を観つつ年に数回現地に足を運ぶ現在。
私と埼玉西武ライオンズの距離は縮まったり離れたりしながら、今まで続いている。

 

西武で一番好きな選手は、金子侑司選手だ。でも、私が胸を張って「推しは金子です!」と言えるようになったのは、ごくごく最近である。
私は長年、自分が金子選手のファンであることを認められなかった。

これから、私が「かねこのおたく」になるまでを綴る……と見せかけて、「ここが好きだよユウジカネコ」を語ると共に、2019年シーズンを振り返ろうと思う。まあ要するにおたくのめんどくさい自分語りだ。
なお、私は金子選手のことを普段「ねこさん」と呼んでいるが、この記事の中では「金子」に統一する。(※金子選手はチームメイトにも「ネコ」の愛称で呼ばれている)

 

 


そもそも私がなぜ金子ファンを自称するのに時間がかかったかというと、まず一番大きな理由はおそらく、金子が「イケメン」だからだ。

私は、イケメンが好きだ。でも、「イケメンが好きな自分」は嫌いだ。
それこそ10代の頃から、イケメン俳優や男性アイドルにキャーキャー言うのは恥ずかしいと思っていた。

「私は顔が良い男になんて興味ないのよ」という顔をしていたかった。

と同時に、イケメン俳優や男性アイドルにキャーキャー言える人が羨ましかったのも事実だ。
念のため言っておくが、私は「イケメンが好きな自分」が嫌いなだけで、「イケメン」も「イケメンが好きな人」も否定するつもりはない。

 

これはただ単に、私の自意識が過剰に尊大なだけであって、平たく言えば「普通とは違う自分」「流行とか外見に左右されない自分」でいたかっただけである。
"いたかった"と過去形なのは、今の自分はどちらかというと「普通になりたい」欲求が強いからだ。


また、年齢を重ねるに連れて、顔が良い男性に対しても素直に「か、顔が良い~~~~~~♡」と言えるようになった。

 

ただ、「イケメンが好きな自分」に抵抗があるのは、今も変わらない。

だから、「顔がかっこいいな」と思ったのが事実だとしても、「顔が良いことは認めるけど、顔以上に◯◯が良い」と言えないと、なんだか自分で自分が許せないのだ。


金子の話に戻ると、金子は「イケメン」である。実際に顔が整っていることも事実だが、何よりも球団やチームメイトを始めとした周囲に「イケメンキャラ」扱いされ、「イケメン売り」されている。
だから、野球が多少わかる人なら西武ファンでなくても「金子?ああ、あのイケメンの?」という認識の人も少なくないと思う。実際に私も金子の名前を出して、そういうリアクションをされたことが何度もある。
そのたびに私は、「いや、確かにイケメンなんですけど、顔で好きになったわけじゃないんです!」と言い訳めいた言葉を続けなければならないのだ。


事実、私が金子を好きになったきっかけに顔は関係ない。


まず私が、最初に金子を強く意識したのは、2013年のフレッシュオールスターだ。
イースタン・リーグの三番・二塁手としてスタメン出場し、打って走って大活躍した。
その際にドヤ顔ではしゃぐ姿がネットで話題になったのだ。(今でも当時のまとめサイトが残っているはずなので、興味がある人は検索してみてください)

そのとき、「調子乗ってるの可愛いな!笑 しかも西武のルーキー!」と思ったのが、記憶にある一番初めの金子侑司である。
それより前にも開幕一軍で注目はしていたはずだが、あまり記憶にない。当時は大学生で寮生活をしており、中継を観られない環境だったせいもあると思う。


金子は俊足が売りのスイッチヒッターで、入団当初は内野手、とくに二塁か遊撃の守備につくことが多かった。
俊足スイッチヒッター!!!!
こんなん……こんなん好きにならざるを得ないやん????????????????


私はとにかく足が速い選手が好きだ。
祖父は阪神ファンで幼い頃は阪神の中継ばかり観ていたが、赤星が大大大好きだったし、西武ファンになってからは野手では片岡が一番好きだった。

だから、もう「俊足」の時点で好きになっちゃうのだ。
しかもスイッチヒッター内野手
ハイかっこいい!!!!!!!!!!!!!!!!


しかも、金子の守備は、いわゆる"魅せる"タイプ。
ファインプレーもあるが、やらかしも多い。
私はこのやらかし気味の魅せるタイプも大大大好きなのだ…………同時期に阪神の上本大和の二遊間にはちゃめちゃにテンションが上がっていたといえば通じるだろうか…………(上本や大和も若手イケメン売りされてた話はとりあえず置いといて)

 

そんなこんなで私は、金子のやらかすところも込みで好きだったのだが、あいにくこれは他人に説明しづらく、自分の「顔で好きになったんじゃなくて、」に続く言葉に、いまいち説得力が持たせられないでいたのだ。

 


もちろん、「イケメン」「俊足スイッチヒッター」「”魅せる”タイプの内野手」という点以外にも、金子選手の推しポイントはたくさんある。

 


「自分はこうありたい、こう見られたい」という意識がとても強いところも、金子の好きなポイントの一つだ。
最初は、金子の「自分がイケメンである」と自覚した振る舞いが好きだなと思っていた。
だが、彼の言動を見ているうちに、「自分がイケメンであることを自覚している」というよりかは、「カッコイイと思われたい」に近いような気がしてきたのだ。

自分が思う「カッコイイ自分」になりたい。
チームメイトに信頼される野球選手になりたい。球団に戦力として認められる野球選手になりたい。ファンに応援される野球選手になりたい。みんなに愛される人間になりたい。

メディアに出てくる金子選手は、ファンサービスが上手い。
「こういうの好きでしょ?」と言わんばかりの振る舞いを見せることも少なくない。

しかし、野球に対する姿勢はどこまでもストイックだ。
早出の特打ち。コーチにマンツーマンで指導を受ける姿。守備でも打撃でも走塁でもがむしゃらな姿勢。

人はそれを「ギャップ」と言うかもしれないが、私はこれは根本的には同じだと思う。

 

そんな金子を象徴する言葉が、「華麗奔放」と「平常心」だ。
この二つの言葉は金子選手の座右の銘で、グラブの表に「華麗奔放」、裏に「平常心」と刺繍を入れている。(※2019年現在は変更しているとの情報あり)

表は華麗奔放、裏は平常心。
華麗奔放な守備をするためには、地道な練習で基礎的なスキルを磨き、何事にも動じない心を育てることも必要だ。
しかし、金子選手はそんな「ひたむきに努力する自分」はあまり見せようとしない。それは、「ひたむきに努力するところは見せないほうがかっこいい」と思っているからではないだろうか。


まあこれは正直かなり私個人の妄想である部分が大きい*1のだが、この金子選手に対する考察が言語化できたとき、私はより一層、金子が好きになった。


自意識過剰な抵抗感で「イケメン金子」を遠ざけていた私だが、そんな「イケメン金子」もまた、彼自身の自意識の産物なのだ。


私が「イケメン好きな自分が受け入れられない」とうだうだ言っていたように、金子も「カッコイイ自分でありたいのに、そうなれない」事実に苦しんでいた。
そこ同列で語るのかよって感じだけど、「自分に対する解釈違い」という点では同じなのだ、きっと。


そして、私が今、素直に「金子ほんとにかっこいい……大好き……」と言えるのは、他でもない金子自身がどんどん「カッコイイ自分」を実現してくれたおかげだ。

 

2019年、金子は守備でも走塁でも大きくチームに貢献した。

内野手としてはかなりやらかし気味だった金子だが、出場機会を求めて2016年頃からは外野手に挑戦、2017年には登録も外野手に。
外野でも最初は不安定さが目立ったが、次第に感覚をつかみ、脚力を生かした広い守備範囲でファインプレーを連発するようになった。とくに、フェンス際でも恐れずに突っ込んでいく姿が印象的だ。
「いい当たりだ!レフト!金子侑司!……捕っています!!!!」という実況を聞いたのは、一度や二度ではない。*2
金子の守備に助けられる場面も多く、今では「あの頃に金子の守備disってた人たちどこ行った!?」と思うくらい、ファンからも信頼される外野手に成長した。


また、盗塁もリーグトップの41盗塁。
ただ走るだけでなく、相手チームを揺さぶって与えた影響を考えると、数字に表れない貢献度はもっと高いと思う。


こうして金子自身が自分の思う「カッコイイ野球選手」に近づいてくれたおかげで、私も胸を張って「金子が好きです!」と言えるようになった。

 

こんな書き方すると「活躍してないときはファン名乗るのが恥ずかしいって!?」と怒られそうだが、そもそも「なりたい自分になろうと足掻く金子侑司」が好きだけど、おたくじゃない人にそれを説明するのが難しすぎるだけなんです……すみません……。

 

そういえば、もうひとつ今季の金子で印象的なことは、良い意味でも悪い意味でも「調子の波がなかった」ことだ。

私は、金子の「調子がノってるときは調子に乗ってるし、調子に乗れば乗るほど調子がいい」ところも大好きなのだが、2019年シーズンは、あまりそういう姿がなかったように思う。
でも逆に、「まじでむりそう……」という日も少なかった。
そんなに調子がよくなさそうに見えても一試合に1本はヒットが出たり、守備でのファインプレーがあったりした。
また、そういうときの金子は露骨に肌ツヤが変わるというか、顔面の作画が良い時といまいちな時があったりもしたが、今季はずっと「良い顔」をしていたように思う。

このへんはデータに基づいていないおたくの曖昧な記憶に基づく感想なのだが、佐藤友亮コーチの言う「感情の起伏もなくなってきたし、人間的な成長が、何よりも大きい」*3には、これも含まれているのかなと思ったりした。


また、逆に以前はあまり見せなかった「カッコワルイ自分」を表に出すことも増えてきた気がする。
具体的には、2019/5/3対日ハム戦5回裏ビハインドを追いかける展開で追い上げムードの中で回ってきた打席、捉えた良い当たりがサードライナーになり、バットを大きく振り上げて、たたきつけるかと思われたがそのまま固まって、やめた場面とか。
一塁への走塁や、二塁への盗塁で際どいタイミングでアウトになってうなだれる姿とか。
2019/10/13対ソフトバンクCSファイナル第四戦9回表にホームランを追いかけてフェンスによじ登る姿とか。
今までだったらあまり見せようとしなかったひたむきな姿も、見せるようになったような気がする。
それが何を意味するのかは断定できないし、そもそもこの感覚も私個人の主観でしかないが、私はそんな野球に真剣でひたむきな金子はとてもカッコイイと思う。

 

というわけで、2019年の金子侑司選手は、顔もプレーもずっとかっこよかったのだ。
私はますます金子のことが好きになった。


ここに至るまでに、背番号Tシャツを買う、KANEKOユニフォームを買う、などの段階も少しずつ踏んできた。
(とくにユニフォームは、決して安くはない買い物だし、強制的に推しとペアルックになるし、着ていると周囲からその球団のその選手のファンとして見られるし、私にとってはかなり思い切った決断だった。購入したのは2018年シーズン中だが、「推しに恥じないファンになろう」と思ったことを強く覚えている)


だが、最後の最後に私の心の壁を壊してくれたのは、金子侑司選手自身だ。

今なら言える。「一番好きなのは金子侑司です」と、胸を張って。

 

ねこさん、ありがとう。これからもずっとカッコイイあなたでいてください。
応援しています。

 

 

 

*1:2000%妄想だよなと思っていたら、つい最近この説を裏付けるような本人の発言が次々と観測されている。
参考リンク:その足で、その守備で……絶体絶命の西武に金子侑司が必要不可欠な理由 http://a.msn.com/01/ja-jp/AAIGTP9?ocid=st

*2:この副産物として「帽子を落とす金子侑と拾う秋山」が誕生した

*3:上記参考リンク参照