エモーショナルの向こう側

思いの丈をぶつけに来ます

劇団た組インターネット公演『要、不急、無意味(フィクション)』を観た

 


劇団た組インターネット公演
『要、不急、無意味(フィクション)』
4月18日 19:00回

を観た。


新型コロナウイルスの流行で自粛が続く今の状況を逆手にとったSkypeによるインターネット公演。


実は私はチケットの予約ができず落ち込んでいたのだが、直前にある人から枠を譲ってもらえることになり、観劇ができた。
このへんの経緯の詳細は省くけど、本当に本当に嬉しかったです、ありがとう……。

 

というわけで、観られることになったのだが、Skypeのグループ通話を利用した今までにない公演形態で、最初はトラブルもあった。


具体的なトラブルとしては


・リンクからグループに参加しても通話に参加できない。
→PCからアクセスしたが、ブラウザだとどうしても無理で、アプリを起動したら参加できた(ともにゲストとして参加) 。たぶんスカイプのマイクとビデオのオフを、通話内ですればよかったのに、アプリへの許可でNG出してたから通話に参加できなかった。


・PCからだと上に参加者のアイコンが出るので、それによって役者さんの顔が隠れてしまっていた。とくに目元が隠れてしまって残念だった。
→表示をかえる方法があったのかもしれないけど、最後までどうしたらいいのかわからなかった。


・男3人の会話に後から1人加わって4人になる流れなのだが、4人目の映像が流れず、音声のみ。
→これも最後までどうしたらいいのかわからなかった。うまくいってた人がいたら是非教えてください……。

 

と、まあこんな感じだ。


私の操作ミスなのか、運営側の問題なのかは、正直わからない……というか、たぶん私のミスだったんだと思う。
でも、チャットで他にも「観れません」と報告してる人がいたし、通話に参加している人数が定員より少なかった気がするので、もしかしたらまるっきり観れなかった人もいるのかもしれない。

初回で観客側も運営側も予期せぬ事態も起きていたんじゃないかと思う。
これから観る人は無事に観劇できますように!
私の失敗も生かして、万全の状態で臨んでほしい。


まあでも、こういうドタバタも含めて、リアルタイムの公演の醍醐味なのかもしれない。

 


というわけで、ここからは肝心の中身についての話。
あらすじとレポと感想がうまく分けられなくて、いつも以上にぐちゃぐちゃになってしまった。でも、自分の記録のためと、譲ってくれた人への報告の意味も込めて、できる限り思い出して書いておく。まとまりは本当にない。


これから観る予定の人は、観てから読んでください!!!!
今回はネタバレなしで観た方がいいと思うので!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

開始前にチャットで運営からのアナウンス。
その中で、今回の役名が明らかになる。


【秋元・大河・健介・幸作】

 

大河!?
大河って、あの"タイガ"!?
居酒屋公演の!!?!!!!????!?!?


と思ったら、本当にそうだった。
劇団た組は2019年11月に、居酒屋公演を行っている。

今回のインターネット公演が発表されたとき、「あの居酒屋公演みたいな感じかな? また勝大さんいるし……」とは思っていたが、まさなこんなに被せてくるとは……。

ていうか正直、居酒屋公演観てた方が楽しめたと思うので、当時の自分のレポ的なもの置いておきます。

 


そんなこんなで始まったSkypeの会話。
私は前述のトラブルでなかなか通話に参加できず、やっと入れたときにはおそらく5~10分経過していた。


あらすじは、説明しようがない。
本当に仲の良い男たちがSkypeでグループ通話をしているだけだ。

 

会話をしているのは、大河(鈴木勝大)、秋元(秋元龍太郎)、健介(中山求一郎)の三人。

新型コロナウイルスの流行で外出できない日々が続く中、友人同士でリモート飲み会をしているようだ。
でも、ビールを飲んでいるのは大河だけで、あとの二人はコーヒーを飲んでいる。


大河は劇団に所属しているが、こんな状況では公演も稽古もできない。ピザの配達のバイトを受け、今は結果待ちをしているらしい。
嫁は看護師をしているところも、居酒屋公演の設定そのまま、というか完全に同一人物である。設定云々よりも、空気の読めない振る舞いや、無意識に甘えるようなふざけかた、粗野な笑い声でそれが伝わる。これは間違いなく、11月に居酒屋で昔の演劇仲間と飲んでいた大河だ。

秋元は、普通に会社員?のようだ。
彼女はいない。

健介は、専門学校に通う予定だったけど、それもなくなった?

このへんの細かい設定は、聞き逃したか、通話に入る前に終わっていたかで、よくわかっていない。
とりあえずわかるのは、彼らはずっと以前からの親しい友人同士ということだ。


どれくらい親しいかというと、大河が通話繋いだままトイレに行くくらい。
他の二人は「いやお前映像切れよな」とわらっていたけれど。

 

背景は普通の家の中。
全員自宅に引きこもっているのだろう。

「いつ収まんのかね」
「仕事とか行ってるうちは無理じゃね?」

彼らの会話は、最近実際にいろいろな場所で耳にしたり口にしたりしている言葉そのままだ。

 

会話を引っ張るのは大河。
いや、引っ掻き回すといった方が正しいかもしれない。

自分が「話したい」と思ったらそのまま口から出てるというか、他人の話を聞く気があんまりなさそうに思える。本人はその自覚がないような気もするけど。

だから自分が話したいことを突然話し始めたり、突然口パクになって音声だけ切れる演技をしたり、突然固まって映像固まる演技をしたり、突然ぶんぶん揺れ始めたりする。


観客として観てる分には面白いけど、正直友達との会話でこれやられたらかなり鬱陶しいと思う。


そこにあとから幸作(諫早幸作)が参加してくる。
大河が「全員揺れてようぜ!」と言って、三人ともぶんぶんヘドバンしてるところにだ。謎すぎる。


私は幸作の映像が観られなかったので、どんな顔で話していたのかがわからないのだが、幸作は結婚してるのに彼女が二人いるらしい。しかも新しい二人目の彼女は15歳らしい。


15歳!?
え?は?どゆこと??????


三人の興味が一気にその15歳の彼女に向かう。


「きっかけは?」
「向こうからのナンパ。スタバで連絡先渡されて、ラインして~みたいな」

「15歳って気づかなかったの?」
「気づかなかった。韓国とのハーフで大人っぽくてさ」

「え、どこまでした?」
「してないよ何も!健全!健全!」

「まーじで!?」

 

正直、幸作が来るまでの会話は友人同士のとりとめもない日常会話で、「知らない人たちの会話覗き見してる」感覚が強かったのだが、幸作の15歳の彼女の話は自分も一生懸命聞いてしまった。
他人の恋愛話とかなれそめ聞くのって、何でこんなに楽しいんだろうか。

 


そして大河が、「幸作をムラムラさせてやる」といってPCでAVを再生し始める。
画面はこちらに向いてないので、音声だけ。
甲高い喘ぎ声を聞きながら「いや、何それ」と苦笑する他の三人。


「ムラムラした?」
「しねーよ、声だけだし」
「声だけだと逆に興奮しねえ?」
「いや、お前だけ観てんじゃん!」


そして、AVが閉じられなくなる。嫁の仕事用のPCなのに。嫁、いつコンビニから帰ってくるかわからないのに。


喘ぎ声をバックに続けられる会話を聞きながら、「私はいったい何を観させられているんだ?」と思っているうちに、通話が切れた。

 


そして一年後。

チャットでお互いに準備ができたか確認しあう四人。

通話が始まると、全員薄暗い部屋にいてびっくりした。
どうやらまだ流行は続いており、外出などに厳しい制限がかかっているらしい。


食事はまずい配給を食べるしかなく、トイレットペーパーは幅が狭くて木のように固い。
髪を切りにいくにも許可証が必要で、申請はLINEでもできるけど手続きに最短三日はかかる。
そんな、もしかしたらあるかもしれない未来に、彼らはいる。

大河の嫁は看護師だから、もうずっと家に帰ってきていない。
幸作の15歳の彼女は16歳になったが、ずっと会えておらずビデオ通話が精一杯。


「このまま会えなくて次に会うとき彼女30歳とかだったらどうする!?」
「それは嫌だな~。そうなる前にちゃんとしとけばよかったと思うよね」
「何?セックス?」
「ちげーよ、自粛とか!」


「AVも自粛始まった頃に新作も旧作も無料とかあったけど、今もう新作ないから見飽きたよね」
「そんときアクセスありすぎてサイト落ちてなかった?」
「落ちてた落ちてた!」
「どんだけ皆シコってんだよっていうな!」
「同時多発シコ」
「AVとかオススメ出てくるじゃん? 似たようなのばっかで新しい出会いがないよな」
「オススメ何出てくる? 俺はナース」
「嫁じゃん」


四人の会話は一年前のままだが、社会の情勢はずいぶん変わったようだ。
電話をするにも許可が必要で、電気がついていないのもきっと規制されているからだろう。

そんな中で裏営業してるところもあるようで、大河は行きたそうな雰囲気だ。


現実世界でも、もしこのまま流行が収まらなかったら、こんなディストピアになってしまうんだろうか?

 


そしてさらに一年後。

今度はみんな明るい部屋にいる。
一番最初にいたのと同じところのようだ。
それだけで、状況が少し好転したのかなという気がする。

白いシャツ姿で仕事帰りらしい秋元。
通勤電車の混雑はまだ8割ほどだが、多くの人が仕事に行けているようだ。

一人だけ通話に参加するのが遅かった健介は、新しいマイナンバーの申請に行ってきたと話す。

これは、流行が一段落した世界なのだろう。
でもまだ自粛や規制が完全に解除されたわけでもないらしい。
AVも、新作が撮影されても接触しないためにすべてエアーで行われているという謎設定。逆に観た過ぎる。

 

そして大河は、大真面目な顔で、「陰謀論」を語りだす。
今回のウイルスは、"悪"を一網打尽にするために意図的にばらまかれたものだという、なんとも胡散臭い話だ。

聞いている三人は、苦笑するしかないが、大河は真剣である。

「いや、そんなん最初から言われてたデマじゃん」
「これは本当なんだって!信頼できる筋の情報だから!」
「証拠ゼロ」


居酒屋公演のときも思ったが、大河は"わかりやすいもの"が欲しいのだろう。
不確実なものや未解決のものを受容する力(ネガティブ・ケイパビリティ)が欠けているというか、自分が"わからない"ものがある状態に耐えられないんだと思う。
だから、わかりやすい「実は……」という話を簡単に信じてしまうし、他人のリアクションにもわかりやすいものを求める。
他人からすると、そんな大河が一番"わからない"存在なのかもしれないけど。


「コロナの隔離期間が終わっても大河は隔離だな」
「外出れずに偏った情報ばっかり見てるからそんなの信じちまうんだよ」
「つーか大河が感染したの、裏営業のとこ行ったからだろ?」
「ずっとそこにいた方がいい」
「エアAV観てみてよ。そんでレビューして」


大真面目に語った陰謀論は全否定され、感染したこともからかわれ、泣き出す大河。

「もう何なんだよお前ら!嫁にも会えねえし!やっと出たAVはエアだし!何だよ2メートル離れて腰振るとかリズムと喘ぎ声ズレてんだよ!だからもう俺やめたし!ダウンロードとか!嫁のハメ撮りでシコってるよ!会えないから!!!!」

そして半ギレの状態で泣きながら嫁のハメ撮りを流す大河。
相変わらず画面は向こうを向いているので、音声だけだ。

「いや、どういう感情?」
「どんな気持ちで聞けばいいの?」

観客が思っていたことは、全部画面の中で言ってくれた。


と思ったら、大河がけろっと「うっそー」と笑う。

「いや、どこから?」
「泣いたのとか、これもAVだし」

「俺はキレ始めたときから演技ってわかってたけどね」
「俺も」
「まあおかしいとは思ったよね」
「これ、詫びでガチのハメ撮り見せるしかないよ」


ニヤニヤしながら迫る秋元、じゃんけんを要求する健介、そしてなぜか後出しで負ける大河。そこに幸作も追い討ちをかけ、ついに声だけ嫁のハメ撮りを流すことになる。

もう完全に、居酒屋公演のときと同じ流れで、私は「まじか!」となりながら腹を抱えて笑っていた。


大河の嫁の喘ぎ声に耳を澄ませながら、なおも会話を続ける四人。

そして、真剣に耳を傾ける映像を最後に、ビデオが切られる。


「この物語は、フィクションでした」

 


これが、今回のSkypeによるインターネット公演の全貌だ。
細かいとこ思い出せないけど、だいたいこんな感じ。

 

正直なことを言うと、100%手放しで「面白かった!」と人にすすめたくなるような内容ではなかった。

私はめちゃめちゃ笑ったけど、でもそれは勝大さんのファンで、11月の居酒屋公演を観ていたおかげでわかるネタがあったからだ。
だから、とくに誰のファンでもなく、居酒屋公演も観ていない人が観たら、どう思うのかは純粋に疑問に思う。
いろんな人の感想を知りたいから、Twitterでもブログでも何でもいいから感想を公開してほしい。


でも、Skypeで公演をするという試みは、本当に面白いと思う。
グループ通話という形式も、「自分も通話に参加している」という意味で、観客である私も、演者である俳優も地続きの状態だった。
"観客"側の誰かがビデオ通話をかけて、この会話に入ることも、不可能なことではない。フィクションとノンフィクション、観客と俳優の境界線って、案外そんなものなのかもしれない。


グループ通話で話す四人は、現在の私(たち)と全く同じ状況の中を生きていた。
でも途中から、彼らの時間だけスキップしていく。

一年後のディストピアは、もしかしたら私たちにも待っている未来かもしれない。
二年後のなんとか回復した状態に早くなればいいなと思うけど、それが現実世界で実現するのはいつになるかわからない。

 

終盤、「うっそー」と演技だったことを明かす大河に、友人たちが「いや、どこから嘘?」とツッコむ。
最後に「この物語は、フィクションでした」と言われたときの私も、同じ気持ちだった。

「いや、どこからがフィクション?」

 


あえて「フィクション」ということで、逆に「いやいやいや」みたいな気持ちになるのは何故だろう。

あとめちゃめちゃどうでもいいけど、最後にフィクションであることをアナウンスするのって、涼宮ハルヒっぽい。
思えば、2月に始まったコロナ騒ぎが4月も中盤になった今も全く収束しそうにない今の状況は、ちょっとタイムリープものっぽい。


「この物語は、フィクションでした」と言ってしまえば、あのディストピアな未来予想図もフィクションでした~で終われるだろうか。
でもその理論で行くと、収束した未来予想図もフィクションになってしまうのか?

とにかく私(たち)は、新型ウイルスに翻弄される今の現実を生き抜かねばならないのは、間違いなく事実だ。

 

 

そういえばこの公演は『要、不急、無意味(フィクション)』というタイトルだが、たいへん端的で良いなと思う。

不急でも、この4人にはこの時間が必要なのだろう。それがたとえ無意味だとしても。

そしてそんな無意味な会話をフィクションでやる意味ってどこにあるんだろう、ほんとに…………

でも、今の私にはフィクションが必要だ。

 

 

全然まとまらないけど終わります。

 

※まとまらなさすぎたので、さらに書きました。