エモーショナルの向こう側

思いの丈をぶつけに来ます

2023年観たもの行ったものまとめ


あとちょっとで今年が終わってしまう!!!!
というわけで、恒例の一年振り返り記事です。

2023年は様々な制約がなくなり、気兼ねなく遠征ができるようになった年だった。
ここ数年は配信にお世話になったことも多かったけど、まとめてみたら今年は全然配信を観てない。購入しようと思った公演はあるけど、観る時間が確保できなくて断念してた。あ、でも年明けてからアイドルちゃんのカウントダウンライブの配信は買うかも……。

今年はカウントダウンイベントには行かず、大晦日はおうちで紅白観て過ごします。

 

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ライブ参戦

0101*SUPER DISCO Hits13!!!〜COUNTDOWN DISCO!!! PARTY〜(the telephones/THE BAWDIES/9mm Parabellum Bullet/四星球)@東京
0119*cinema staff×ヒトリエ@名古屋
0128*twinpale@名古屋
0312*GUILTY×GUILTY@名古屋
0422*ストレイテナー@山口
0513*ストレイテナー@岐阜
0716*sukida dramas@名古屋
0916*ワイルドバンチ
0917*ワイルドバンチ
0918*sukida dramas@名古屋
0919*9mm Parabellum Bullet@武道館
0923*中津川ソーラー武道館
0924*中津川ソーラー武道館
1123*twinpale@名古屋
1202*夜の本気ダンス/THE BAWDIES@岐阜
1209*ヒトリエ@大阪


(ライブ12本+夏フェス4日間=計16本)


ライブの本数は普通……というか思ったより少ない!!!!
あと観てるバンドがめちゃめちゃ限られている!!!!

結局、好きなバンドは高校生くらいからあんまり変わってないのかもしれない。
9mmもストレイテナーも、高校生からずっと好き!

9mm武道館は、直前に行くことを決めて弾丸遠征してきた。
スタンド上段の見下ろすような席だったけど、本当に楽しくて、行って良かったとしみじみ思った。
9mmずっと好きなのに、武道館ライブは初めてだったんですよね〜。なぜなら彼らは9のつく日にイベントやりがちで平日のことが多いから!今年はなんとか都合ついたからよかったけど。
テナー武道館は別の舞台と日程重なってたから行ってないです。でも絶対最高だっただろうな〜!

twinpaleとGUILTY×GUILTYは女の子アイドルちゃん!
ここには書いてないけど、夏に浴衣チェキ会にも行っている。
最近はだいぶチェキにも慣れてきたけど、やっぱり可愛すぎて語彙力が溶けてしまう。アイドルライブのお作法は未だにわからないけど楽しいです。

今日は、ギリギリまで9mmアルカラcinemaのライブに行こうか迷ってたけど、カウントダウンないのでやめました。Zeppダイバーシティで22時に終演しても帰れん……。
来年はまたライブハウスで年越ししたいな〜!

 


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観劇記録

0115*幽霊はここにいる@大阪
0122*劇団彗「クロスギフト」@岐阜
0204*おやすみお母さん@東京
0205*初級革命講座飛龍伝@東京
0211*博士の愛した数式@長野
0218*serial number08「Bug」@東京
0226*青森県のせむし男@名古屋
0311*掃除機@横浜
0319*試験管ベビー「いつかだれかと結婚します」@名古屋
0321*劇団やるせない『 』@大垣
0402*ダブル@東京
0409*おとこたち@大阪
0416*たぶんこれ銀河鉄道の夜@大阪
0430*オイスターズ「またコント」「可児君の面会日」@名古屋
0503*かいとうらんま「にっぽんばんざい」@岐阜
0514*ラビットホール@大阪
0527*劇団た組「綿子はもつれる」@東京
0617*イキウメ「人魂を届けに」@大阪
0625*ある馬の物語@東京
0701*ハイバイ「再生」@三重
0812*NODA MAP「兎、波を走る」@大阪
0817*朗讀劇『極楽牢屋敷』かりそめ@東京
0817*朗讀劇『極楽牢屋敷』みせかけ@東京
0820*NODA MAP「兎、波を走る」@博多
0827*桜の園@東京
0909*こまつ座「闇に咲く花」@大阪
0925*象@阿佐谷
1009*いつぞやは@大阪
1014*スリル・ミー木村達成×前田公輝@名古屋
1015*スリル・ミー尾上松也×廣瀬友祐@名古屋
1022*三人姉妹@愛知(知立)
1118*ガラスの動物園/消えなさいローラ@東京
1119*このレールはドラマチック@東京
1119*このレールはドラマチック@東京
1125*劇団あとの祭り「楽園のジェイルブレイカー」@岐阜
1202*劇団du 学祭公演@岐阜
1203*刈馬演劇設計舎「フリーハンド」@名古屋
1203*試験管ベビー「仕方ないから働くか」@名古屋
1217*ねじまき鳥クロニクル@愛知(刈谷)
1226*鈴木勝大一人芝居「食事」@東京

(現地 約40本)

一公演で複数演目やってたり、同じ演目を複数回観たりしてるから、ざっくりカウント。

個人的に今までで最多の観劇数!!!!
毎月どこかで何か観ていた!最高!

どれも良かったんだけど、直近で食らったのは鈴木勝大さんの一人芝居。私の好きな演劇を、私の好きな俳優さんがやってくれてて本当に嬉しかった。

あと加藤拓也脚本演出は、やっぱり好きだ……。
「綿子はもつれる」も「いつぞやは」も大好きでした!

ミュージカル「おとこたち」も良かったし、こまつ座「闇に咲く花」も面白かったな〜!

そういえば今年はなぜか砂を使った演出を観る機会が多かった。「幽霊はここにいる」「博士の愛した数式」「ガラスの動物園」が砂舞台で、びっくりしました。

一番行った会場は森ノ宮ピロティホールで4回。
一番観た俳優さんは鈴木勝大さんで7回。次点が成河さんで4回かな?

来年の舞台の予定もどんどん決まってきてて、観に行きたい作品がたくさんある。
あとは観に行った本数に対して感想ブログ書けてる作品がごく一部だから、書く習慣をもう少し着けたいな〜。


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映画鑑賞

0109*THE FIRST SLAM DUNK(2回目)
0328*エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
0604*怪物
0624*最後まで行く
0810*君たちはどう生きるか
0816*ミッションインポッシブル/デッドレコニングPART ONE
1001*バッド・ランズ

(劇場7本)

映画もテレビや配信では全然観てない。そして映画館にもあんまり行けてない。

今年観て良かったのは「怪物」と「バッド・ランズ」かな。
両方とも邦画で、少しずついろんなことがわかっていくてんかいがめちゃめちゃ面白かった。

今、公開中で観に行きたいと思っているのは、「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」「ゴジラ −1.0」「翔んで埼玉2」「首」「窓際のトットちゃん」

年明けには「カラオケ行こ」も観に行きたい!


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野球関連

0415*中日×巨人@バンテリンドームナゴヤ
0607*西武×中日@ベルーナドーム(先発:涌井)


今年の現地はこの2試合だけ。
両方とも涌井を見るために行ったけど、4月の方は直前にローテ変わって見れませんでした。

6月の西武戦は最高だった!
西武の本拠地のマウンドで投げる涌井が見れて幸せすぎたし、8回のマウンドに向かう姿を見て泣きそうになった。
終電を見送って、その場で夜行バスをとり、ギリギリで球場をあとにした直後に、西武ライオンズ長谷川信哉選手のサヨナラホームランでした!
涌井が好投して、最終的には西武が勝つ展開まで理想的!!!!

でも西武戦はあんまり観れてない……観ても負けること多かったし…………
金子の成績も振るわなかったので、来季に期待!


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以上、私を支えてくれたものまとめ!

チケット代と交通費は計算してはいけない!
お金で買える幸せは買ったほうがいい!!!!

来年も無理のない範囲で、無茶しよ〜と思います!
良いお年を!!!!

 

鈴木勝大一人芝居『食事』が最高だった話


12月26日(火) @IZUMO GALLERY
鈴木勝大一人芝居『食事』
脚本・出演:鈴木勝大
応援出演:馬場良馬松本寛也


を観てきた。

結論から言うとめちゃめちゃ良くて、勝大さんのことがもっともっと好きになった。

私は元々『特命戦隊ゴーバスターズ』で鈴木勝大さんを知ってファンになったので、かれこれ10年近くになる。
勝大さんを追いかける中で、観劇ブログを書くきっかけもできたし*1、大好きな劇団にも出会った*2


脚本を書いてみてるっていうのは随分前に勝大さんか自身のSNSで言ってたのを見た記憶があったから、「やっとか!」と思った。
私は勝大さんの、幅広くいろんな舞台に出演しているところとか、自主企画で岸田國士の戯曲を選ぶところとか、そういう演劇愛を感じる活動ぶりが大好きだから、そんな勝大さんの描く世界ってどんなだろうとすごく楽しみにしてた。


そしたらもう……期待以上で……………ほんとに良くて…………………

 

ここからは自分のための覚え書きとして、細かい感想というかレポというかをつらつら語ります。

でも、まだ観てなくてこれから観る予定の人には、絶対に前情報なしで観てほしいから、まだ読まないでほしい!!!!

「私、ネタバレとか平気だから」とかじゃなくて、ファンとしての切実な願いで、前情報なしで観てほしいので、ほんとにお願いします!!!!!

めちゃめちゃ良かったってことだけ伝えておくので!絶対に大丈夫なので!!!!


すでに観た、あるいは観劇の予定がない人はどうぞ。

 

 


以下、ネタバレありの覚え書き。

 


会場はIZUMO GALLERYという、早稲田駅から徒歩10分ほどの場所だ。
昨冬に秋元龍太朗さんと二人芝居をしたのと同じ会場で、住宅街を「本当にここ?」と思いながら歩くと辿り着く。
今回は開場前に人が並んでいたからわかりやすかったけど、知らないと通り過ぎてしまうと思う。
「本当にここ?」という建物と建物の間の細い階段を降りた地下のスペースがIZUMO GALLERYだ。


「ギャラリー」というだけあって、演劇専門の空間ではない。
広さはたぶん学校の教室の半分くらい。キャパは30前後だと思う。演者と客席の距離も近く、ミニマムな空間だ。

スタッフさんは一人だけ。
その人が、入場受付も物販対応も全部やっていた。

入ってすぐのところに物販があり、台本入りフォトブックとポストカード2種を販売していた。もちろん買った。
でも私は始まる前には何も情報を入れたくない派なので、中は全く見ずに席につく。

3列に並んだ椅子の3列目に座ったが、そもそも狭い空間なので、それでもとても近い。
椅子も高低差があるので前のお客さんの頭もさほど気にならなかった。

物販の奥は黒い幕で仕切られていて、奥からさざめきのような笑い声が聞こえる。楽屋だ。勝大さんと馬場さんと寛也さんがいるんだ〜〜〜〜と、ちょっと緊張する。


舞台上には、小さなテーブルと2脚の丸椅子、あと隅に流し台。
背景の壁には横幅1mほどの黒い紙?のようなものがかかっている。

 

開演を待つ観客の前に、突然、勝大さんが現れた。

「あ、まだ始まらないですよ」

白いオーバーサイズのシャツに、ベージュのチノパン。
腕の中には、頭に黒い風船をつけたトルソー。
それを舞台上に置き、テーブルと椅子の位置を整える。

「まだ開演まで5分くらいあるので、お手洗いとか行きたい人は今のうちに。トイレ、ここにあるんで。物販買いたい人も見てもらって。あ、全然、喋ったりしててもらっていいんで。始まるときは、『始めます』って言います」

ラフな雰囲気でそれだけ言って奥にまた去る。
今から思えばこれも演出だったのかもしれない。

 

開演時間になるとスタッフさんが客席の光量を落とし、それで始まるんだなとわかった。

でも、出てきた勝大さんは、やっぱりとてもラフな雰囲気だ。

「あ、どうも、こんちはー」みたいな感じで入ってくるもんだから、客席も自然に(こんにちは〜)という感じで薄くリアクションをする。

「あ、鈴木勝大です」

客席(存じ上げております)という空気。

「それじゃあ、そろそろ始めますね」

客席(はい)

「いきなりなんですけど、ここのツボ知ってます?」

客席(?)

「親指と人差し指の付け根らへんにある、ちょっと押したら痛いところなんですけど、ここ」

客席も、つられてそのツボを押す。

「ここ、ここね、『ゴウコク』っていうんですよ。『合谷』……知ってます?」

そう言うと勝大さんはポケットから白いポスカを取り出し、シャカシャカ振ると、おもむろに背後の黒い紙に、『合谷』と書いた。


ここでようやく「あ、これもうお芝居始まってるんじゃん!」と気がつく。
いや、客席にはもしかしたらまだ気がついてない人もいたかもしれない。
それくらいシームレスで、力みのない開演だった。


…………ていうかこれ、私、めちゃめちゃ好きな形式なんですが!?
劇団た組とか、ハイバイとかであるやつ!!!!


勝大さんの語りは、淀みなく、でもどこにもわざとらしさもなく、ものすごくナチュラルで、それでいて惹きつけられた。


「僕はこのツボのことを小さいときに母親に教えてもらって、そのときのことをすごく覚えてるんですよ」


そして勝大さんは、クラスで一番背が低くて、それをからかわれたエピソードを語り出した。

「それで僕、泣いちゃったんですよね」

『うぇーん』

舞台袖……というか楽屋の黒い幕の中から泣き声が聞こえてくる。

と思ったら、寛也さんが泣きべそをかきながら舞台に現れた。

「どうしたの?」

さっきまで『鈴木勝大』だった勝大さんが、一瞬で『母』になっていた。
椅子に座ってしくしく泣く少年(松本寛也)の頭をそっと撫で、抱きしめる。

「ここはね、合谷って言うの。ここ押すとね、悲しい気持ちがなくなるんだよ。だから、一人のときにどうしてもつらくて泣いちゃいそうなときはここ押して我慢しておきなさい。すぐにお母さんが助けてあげるからね」


合谷を、母に教わったときの話だ。
少年(松本寛也)がはけると、勝大さんは再び『鈴木勝大』に戻る。


「なんで今日こんな話から始めたかというと、自分が今まで生きてきた中でしてきた行いの中で一番やっちゃいけないことというか、一番後悔していることにこの合谷のことが関係してて。誰にも、その時のことは、家族以外には、知られないようにしてきたんですけど、今日はどうしてもそのことを言いたくて、それを打ち明けられたらなって」


「あ、でも、まずは僕のことを知らないという方もいるかもしれないので、あ、鈴木勝大と申します」


いや、この一人芝居に来てて、勝大さんのこと知らない人いるわけなくない!?!!??!?と、たぶん会場にいる全員が思ったと思う。

でも、その口から語られるエピソードは、確かに知らないことばかりだった。


まず、親が離婚して名字が変わり、本名だったはずの「鈴木勝大」が芸名になったこと。
そのときに事務所の社長に相談したこと。

馬場良馬が、おずおずと舞台上に現れる。

「あのー、ちょっと親が離婚しまして、で、母親の旧姓の方に名字を変えることになって」

その瞬間、さっきまで『鈴木勝大』だった勝大さんは、『事務所の社長』になっていた。
椅子に座り、頬杖をつき、「おん」と相槌を打ち、鈴木勝大(馬場良馬)の話を途中で遮り、「濁点ないとダメだろ、濁点。運気上がるんだから」とよくわからない理由で『鈴木勝大』であることを強いる。

時期的に、このエピソードが本当なら、このときの所属事務所はエヴァーグリーンのはずだが、そもそも本当の話なのかも、観客には判別できない。


その後の話も、本当なのかフィクションなのかわからないことばかりだった。

重い障害を持って生まれた妹。
これは昔ブログで読んだ記憶があるから本当のことのはずだ。
勝大さんがその妹さんのことを大切に思っていることも。

お父さんの話は、今まで聞いたことがない。
誰もが知ってる有名ブランドの社長だったが、今はいろいろあってガソリンスタンドで働いていて、息子には興味のない仕事人間。
誕生日プレゼントだといって哲学書*3を、誕生日の2日前に投げて寄越すような人。

母は、重度の障害を持った妹の身の回りのことを一手に引き受けている。
姉は結婚して子供がいるし、父は離婚してから連絡をとってないし、勝大さん自身も仕事があるし別々に暮らしているし、母親が一生懸命ひとりで妹の面倒を見てくれている。


これらのことを話しながら、勝大さんは後ろの紙に次々と文字を書いていた。
母親の旧姓である「月見里(と書いて“やまなし”と読む)」、鈴木家の家族構成を示す図。

そして、そこまで話して後ろを向いたかと思うと、振り向いたときには『早稲田合格』のハチマキをつけ、眼鏡をかけていた、


「あ、これ僕の小学生のときのファッションです」


典型的なガリ勉で、中学から絶対に早稲田に入りたかった勝大さん。
毎朝4時起きで勉強し、学校の休み時間は仮眠にあてる。

机に突っ伏して眠る勝大さんに話しかける同級生。
椅子に乗せたトルソーが、その同級生の男の子だ。

声を発しているのは勝大さんだけだが、その言葉で相手が何を言ったか想像できる。ちゃんと会話に聞こえる。
ここまでの会話のシーンでは馬場良馬さんや松本寛也さんが登場していたが、また違った演劇的表現で嬉しかった。


同級生は遊びに誘うが、勝大さんは「放課後も夜9時まで塾で、そのあとも家に帰ってから予習と復習と過去問をやりたいから、今は仮眠をさせてほしい」と断る。


そして、後ろの紙に「PM 21:00」と書き、トルソーを反対側に移動させる。

時間と場所が変わった!塾の自習室だ!
今度はトルソーは、同じ塾に通う女の子になる。

「絶対に早稲田に行くんだ」と熱く語る勝大少年。
どこまで意図的かわからないけど、早稲田大学のすぐ近くの会場でそれを言うのがだいぶ面白い。
しかも、私はたまたま直前に早稲田大学の真ん前のイタリアンでピザを食べていて、「お〜、これが早稲田大学か〜」と思ったばかりだったから余計に面白かった。
そして勝大さんのファンなら当然、彼がどこの学校を卒業しているか知っている。

「ま、落ちたんですけどね。でも翌日に慶應にはなんとか受かってて、入学しました」

ハチマキと眼鏡を外し、受験生モードは終了する。

ここのところ、脚本には受験と合格発表の描写があるんだけど、実はあんまり記憶にない…………私が忘れているだけ? それとも脚本通りでなかった?
観劇した人、もしわかれば教えてください……。


そして勝大さんは、慶應の中学からエスカレーター式で同じ学校で高校生になって、そして高2の頃、突然いじめられるようになる。

いじめの首謀者の先輩役は松本寛也だ。
先輩が入ってきて、後ろの黒い紙を剥がすと、下から「カツヒロ 別名ゴキブリくん」などの文字や大きな💩の絵が描かれた紙が出てくる。

それを見て絶句する勝大さんと同級生(馬場良馬)。
脚本には「鈴木、紙を処分する」と書いてあったが、結局その紙は最後までずっとそのままだった。

脚本との細かい違いは他にもあって、「机の中からゴキジェットが出てくる」とあるが実際はゴキブリホイホイだったし、当時付き合っていた女の子にも被害が及ぶ場面で「机を回転する 糞子ちゃんなどの文字がでてくる」というところは本番では机の引き出しから落書きされたノートを出していた。

泣いている彼女に、勝大さんが話しかけるシーンは、本当に切なかった。
彼女は例によって頭が黒い風船のトルソーなんだけど、勝大さんの話し方が本当に優しくて、付き合ってる女の子との関係が透けて見えた。
それまでは、ひどいいじめを受けても気丈に笑い飛ばしていた勝大さんが、心底こたえているのが、ひしひしと伝わってきた。

「ごめんね。俺のせいだね」と言う声は震えていて、こちらまで泣きそうだった。


「別れよっか」って、言ってましたっけ…………言ってましたよね、きっと。脚本にも書いてあるし。
でもそこまではっきりと言ってないような気もして、でもしっかりその意識は伝わってきてて、とにかくこの彼女とのシーンすごく好きでした。


そしてここから勝大さんの反撃が始まる。

夏休みの交換留学の説明会に行ったら、高3で一人だけいたのが、いじめ首謀者の先輩だった。
ホームステイが二人一組だと言われ、速攻で自分からペアを申し出る勝大さん。

飛行機の中で謝ろうとする先輩を退けて、にこにこしながら正論をぶつける。
このナチュラルにちょっと相手を見下しながら有無を言わせない感じ、勝大さんの演技でまあまあ見たことあるやつだな〜と思った。


一方、松本寛也さんは私はゴーバスターズ以外ほとんど演技を見たことなかったから、性格の悪い先輩役が結構新鮮だった。

ホームステイ先で、先輩の部屋から「シュッシュッ」て声が聞こえて来ると思ったら、シャドウボクシングをしている先輩(ここ、脚本では「はーはー声」からの腕立て伏せだった)。

まともに喧嘩したら勝てないなと思っていたところで、先輩の変態行為が発覚する。ホームステイ先の可愛い娘さんの下着に頬擦りをする先輩を、勝大さんはたまたま見つけてしまう。
ブラジャーにキスをし、自分で身につけて胸を揉む先輩の姿をiPhoneで撮影し、K.O.

 

「ま、ちょっと話が長くなっちゃったんですけど、そもそも何の話してたかっていうと、今日は打ち明けたいことがあるって話なんですよね。で、そのために家族とか自分の話をしてたんですけど。打ち明けたいのは、19歳のとき、父方のおばあちゃんの家に行ったときのことなんですけど」

そう言いながら、勝大さんは椅子に乗せたトルソーを、自分の向かい側にセットする。
そしてテーブルの引き出しからガラスの食器とカトラリーを取り出す。

おばあちゃん家の食卓だ。


ここでも発語は勝大さんのみ。
でも、おばあちゃんにちくちくと嫌味を言われているのがわかる。
そんな祖母を勝大さんが苦手にしていることも、すぐ横には父や母がいることも、自然に伝わってくる。

障害のある妹や、そんな妹を生んだ母のことを責めるような口ぶりの祖母。
祖母は、自分の息子である勝大さんの父が全く協力的でないことを棚に上げて、勝大さんに妹の面倒を見るように言う。
祖母の言い分に納得がいかない勝大さんは、反発して、父ともぶつかって、エスカレートして、

そのとき、母は、机の端で、合谷のツボを押していた。


「あー、お母さんはつらいんだなって。どうしようもなくつらいときはこうやって我慢しなさいって。助けてあげるからって」


そう言って勝大さんは、テーブルの上にあったフォークを握りしめ、勢いよく祖母の頭に突き立てた。


黒い風船が割れる。

客席からは小さな悲鳴が上がる。

 

勝大さんは、頭部を失ったトルソーの首根っこを掴んで持ち上げたかと思うと、テーブルの上で逆さに傾けた。

トルソーの中からドロドロした薄ピンク色の“何か”が流れ出て、ガラスの食器の中に落ちる。

トルソーを戻し、フォークで“それ”を少しすくい、口に入れ、顔をしかめる。

男二人が現れ、食卓の両端から、その様子を眺めている。

 


唐突で、でも決定的な終わり方だった。


正直、トルソーの頭が風船だった時点で「割るんだろうな」というのは予想がついた。
でも、中からドロドロが流れ出てきてそれを食べるのは予想外だった。


今回のタイトルは『食事』だ。

今まで吐き出せなかったことを消化するための35分だったのか?
でも結局、口に入れるだけでまともに飲み込むこともできなかった。
そんな記憶が、これなんだろうか。


どこからどこまでが本当のことなのか、私にはわからない。
ところどころ真実だと知っている要素があるからこそ、余計にわからない。

 

私はリアルな演劇が好きだ。
観ながら「あるよな、こういうこと」とか「いるよな、こういう人」とか思えるようなお芝居が大好きだし、観終わったあとに現実世界の捉え方が侵食されてぐにゃぐにゃぐらぐらするような演劇が好きだ。

今回の鈴木勝大一人芝居は、まさにそういう芝居でぞくぞくした。

しかも、観客がある程度『鈴木勝大』という人間のことを知っていて、そして少なからず好いていることを前提にしたつくりのような気がして、そういうところも含めて勝大さんのことが前よりもさらに好きになった。

 

あと、素直にめちゃめちゃ面白い。
表現のひとつひとつに演劇的な面白さが詰まってて最高。
観客に語りかけるような演出も、一瞬で違う人になる演技の妙も、舞台上に小道具が仕込んであって次々に登場する仕掛けも、観客に想像させる構成も、全部が最高。演劇めっちゃ楽し〜〜〜〜〜って気持ちになる。

 

これを複数公演観てる人が本当に羨ましい。
私はどうしてもスケジュール的に一公演がやっとだった。

でも、できるだけたくさんの人に観てほしい気持ちもある。
そういう意味では、もっとキャパの大きいところでやってほしかった。

でもこの芝居は、この密度、この親密さで観てこそなのかもしれない。
本当に物理的にも心理的にも距離が近くて、プライベートな空間というか、内面に踏み込んでいくような、そんな感覚が会場の空間からも生み出されていた気がする。

 

役者としての鈴木勝大も堪能しました。
間接照明のような少し陰影の出るライティングで肌も目もとても綺麗に見えて、横顔が美しくて、時間や場所を飛び越えながら自然体でそこにいる勝大さんがとても良かった。
いろんな年代や人を演じながらも、言葉だけでなく感情も一緒についてくる、なんなら言葉にしていない部分も微妙な心情の揺れが伝わる、ちゃんとそこにいる勝大さんが本当に好き。

 

これからもずっと、勝大さんを信じて追いかけ続けようと強く思った。
好きな人が、好きな演劇やってくれてて本当に良かった!!!!

 


おわります。

 


あんまり関係のない余談。
伝わる人がいるのかわからないけど、劇団た組の『たむらさん』*4をもう一度観たくなった。
ていうか、加藤拓也さん、鈴木勝大主演の脚本書いてくれないかな……

 


ほんとのほんとにおわり。

 

*1:このブログ初めての観劇記録は勝大さん出演舞台だった。 『岸 リトラル』を観て考えたいくつかのこと。 - エモーショナルの向こう側

*2:劇団た組を初めて観たのも勝大さんの出演がきっかけでした。記事はありすぎるので割愛。

*3:たぶん酒井健太郎の『アリストテレスの知識論』だったと思う。参考→ https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784798502786

*4:劇場で『たむらさん』に会ってきた - エモーショナルの向こう側

『このレールはドラマチック』4号車から、愛を込めて


11月19日(日)
トレインライドシアター
「このレールはドラマチック」

『ノンストップガール』
電車内には、中本アカリと山下大輔というバカップル二人の声が響いていた。
同じ車内に居合わせた青年・小暮順平がカップルを注意するところから、物語は予期せぬ方向へ動き始める。
泣き出す山下を横目に、小暮はとある行動に出る…。

【4号車】
山下大輔役:山口貴也
中本アカリ役:水石亜飛夢
小暮順平役:鈴木勝大

 

本物の電車の中での演劇!
なんだか面白そうな企画だな〜と思っていたら鈴木勝大さんの出演が発表されたので、迷わずチケット取って観に行った。
倍率高そうだなと思って13:00公演と16:00公演に申し込んだら両方チケット取れたんだけど、電車内で席が違うと見え方変わりそうだから両方行った。


集合場所はチケット購入者のみにメールでお知らせ。
公演の情報やレポートは全公演が終わる11月23日20:00まで公開しないこと。

もうこのお知らせの時点でわくわくする。


というわけで、ここからは観劇直後に書き留めたリアルタイムな感想覚え書き。


◯13:00公演

集合場所は品川駅の改札前。
受付でリストバンドを受け取り、改札を通って3番ホームへ。
貸切電車に乗り込むと、ロングシートの一席ずつに座席番号が表示されていたので指定された席に着く。


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車内広告が全部「このレールはドラマチック」のこと以外は、普通の電車と何も変わらない。
待っている間にも向かいのホームには通常の電車が入ってきては出ていく。
これからここで演劇をやる、それを観るというのが何だか不思議だ。

開演時刻が近づいてくるが、車内には空席が残っている。
たまたま客がいない席なのか? それとも役者さんがそこに座る?


どうやってが俳優さんたちが現れるのかがわからなくて、ドキドキしながら待っていると、電車が動き出した。
なるほど、演者はこの先の駅で乗り込んで来るらしい。


発揮して間もなく、今回の脚本演出である岩崎う大さん(かもめんたる)のアナウンスが流れる。

「本日はご乗車ありがとうございます。車掌兼DJの岩崎う大です。電車はこの先、京急蒲田駅まで参ります。皆さん、それまで景色を眺めるもよし、写真を撮るもよし、本を読むもよし、電車をお楽しみください」

普段、電車に乗ってるときは、あまり意識して景色を見ることはない。
でも今日はなんだか車窓から見える青空が新鮮で、私はずっと景色を眺めていた。


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岩崎う大さんは、軽妙な語り口で子供の頃の電車の思い出などを披露する。


「皆さんもそういう子供の頃の思い出ありますか。電車はタイムマシンみたいなもので、いろいろなことを思い出します」

「電車というのは不思議なもので、いろいろな人が乗っています。恋人同士で乗る人もいれば、嫌いな人と乗っていることもあります」

「間もなく京急蒲田駅に到着すると、電車が覚えている景色が蘇ります。皆様それまで日常と馴染ませながらお待ちください」


細かいところ忘れちゃったけど、だいたいこんな感じ。
そうこうしているうちに、電車が京急蒲田駅のホームに滑り込む。

駅のホームでは、仲良さげなカップルが電車を待っている。
山下大輔(山口貴也)と中本アカリ役(水石亜飛夢)だ。

ドアが開き、乗り込んで来る二人。
発車のベルが鳴り響く中、ドアが閉まる寸前に小暮順平(鈴木勝大)が駆け込む。


ここから先は、駅のホームに停車した電車の中でお芝居が始まる。
しかし音響効果でドアの音や電車の走行音が入り、まるで走行中の電車の中のような雰囲気だ。
三人は、吊り革を掴み、電車の揺れに合わせてバランスをとる(演技をする)。


お芝居の中身は、エキセントリックなアカリと、そんな彼女にベタ惚れな山下が、常識人の小暮を巻き込むドタバタコメディ。
さらっと気軽に楽しめるお話だったが、電車の中で目の前に役者さんがいて、手を伸ばせば触れられそうな距離で演じているという状態がいい感じに非日常だった。


以下、感想箇条書き。
※座席は進行方向右側、中央やや前より座席

・勝大さん以外の出演者さんのこと全然知らなかったけど、アカリ役も男の人なのか!水石亜飛夢さん、すらっと背が高くて美しい!
・勝大さん、せせせせせ席に……座っ……!? 隣のお客さん動揺してる……そりゃそうだ…………
・そしてポケットから出した本を読み始める勝大さん……何読んでるかめちゃめちゃ気になる…………ブックカバーがかかっていて中身はわからない……
カップルの会話を気にする勝大さんの繊細な演技すきだ……勝大さんの台詞がないときの”受け“の演技が本当にすき……
・ずっと向こうの方でやり取りしてるなと思ってたらこっち来た!え?アカリちゃん(水石さん)の移動の仕方、めちゃめちゃ小悪魔かわいい……
・ふらふら追いかける彼氏の山口さん、顔が良いのに彼女にデレデレ……
・うわ!勝大さんもこっち来た!文庫本にしおり紐ついてる!新潮文庫か!?
・勝大さんの親指をこんな距離で眺めたことない……………
・ひそひそ会話でもちゃんと何話してるか聞こえるの、役者さんすごいな……事前のアナウンスで「お席によっては見えづらい、聞こえづらい場合がありますが、そこも含めてお楽しみください」って言われてたけど、少なくとも聞こえなくてわからないことは全然ない。
・山口さん土下座した!? そしてそれを連写するアカリちゃん!!!!!!スマホの画面見える位置だったけど本当に撮ってる!
・電車の床でのたうち回る人、初めて見た…………
・……と思ったら、山口さん、このあと何度も電車の床でのたうち回っていた。
・勝大さんのクソデカボイス!!!!!!最高!!!!!!
・去っていくアカリを見るときの山口さんの目が綺麗すぎる…………
・アカリさん、目の前に来た…………やや後ろからのアングルで、顎のラインが男の人でちょっとドキッとする。
・山口さんが目の前で勢いよく土下座してめちゃめちゃびっくりした…………
・終盤、アカリの「あなた意外と賢いのね」という台詞で、「そうなの、勝大さん賢いの」みたいな謎のファン目線になる。
NTR願望ある溺愛彼氏、気持ち悪くて最高だな。
・電車降り際に投げキッスするの小悪魔〜!
・最後、すっと頭下げた勝大さんに拍手できて大満足!

 

◯16:00公演
※座席は進行方向左側、さっきのちょうど向かいの席

・電車がホームに入るときに確認したら、エスカレーターのところにしゃがんで待機してる勝大さんの影が確認できた。半透明の仕切りだったから、シルエットがわかる。
・位置的には全体的に13:00公演のときの方が見やすかったかもしれない。でも、さっきと違う角度で観れて面白い。人の頭ごしに見る勝大さんが結構新鮮。
・勝大さん、なんか可愛い柄の靴下を履いてるな? 組んだ足首から見えてて気がついたけど、遠くて何の柄かまでは見えず……
・やっぱり勝大さんの持ってる本が何か気になるけどわからなかった……ブックカバーが蔦屋書店のやつなのはわかった……
・山口さんの眼鏡、レンズ抜いてある……演劇では反射防止でよくやることだけど、電車の中でもそのルールは有効なのか? それとも床をのたうち回るため?
・どちらにせよ、やっぱり山口さんの目が綺麗すぎる……表情豊かでうるうるキラキラ……
・アカリちゃんも表情豊かでとっても可愛いことを再確認。
・勝大さんの怪訝な顔だーいすき!
・山口さんが電車のドアに顔を押し付けて嗚咽したあと……窓が曇っている……?
・アカリちゃん、最後ちょっと台詞前後しちゃった?ような気がする。
・最後ひとり勝大さんだけ残る演出、やっぱりすきだな……全員降りていくよりずっと良い…………

 


私の感想はこんな感じ!
ストーリーについては良くも悪くもマジで言及することがなくて、役者さんに対する煩悩ばっかりになっちゃった!

勝大さんの読んでいた本と、靴下の柄についての情報をお持ちの方は是非コメントお寄せください…………よろしくお願いいたします…………


私の持っている情報は
(本について)
・蔦屋書店のブックカバー
・しおり紐付きだったので新潮文庫
・厚みは300ページ程度

(靴下について)
・水色と茶色と緑?
・生き物のイラストのようにも見えた?

です!!!!!!!!

 


演劇的なところで言うと、日常の空間を演劇空間にする試みがとっても面白い。
演者さんの声も、自然な会話のボリュームから、ありえんクソデカボイスまで生声で楽しめて良かったです。勝大さんの腹から出した声がすき……。


劇場じゃないところで観る演劇はやっぱり楽しいし、いろんな演劇作品に出演してくれる鈴木勝大さんがやっぱり大好きだな〜と思いました!


おわり!

 

〈2023/11/24 0:40追記〉

勝大さんが読んでいた本について、近くの席に座っていた方から「イリーナとマーシャという文字が見えたから『三人姉妹』ではないか」という情報が寄せられました。

新潮文庫からも出版されていて、252ページなので間違いなさそうです!

勝大さんらしい本のチョイスで嬉しい……勝大さんもいつかチェーホフやってほしいな〜!

 

チェーホフ神西清/訳 『桜の園・三人姉妹』 | 新潮社 https://www.shinchosha.co.jp/book/206501/

 

『スリル・ミー』複数ペア見比べメモ


私のスリル・ミー歴

2019年
成河(私)×福士誠治(彼) ピアノ伴奏:朴 勝哲
@大阪サンケイホールブリーゼ
友人からヤバい舞台があるから観てくれと勧められ、初観劇。ななななななななんだこれはと衝撃を受ける。成河さんの狂気じみた演技と歌の巧さにやられ、それ以来、成河さんの出演作を追いかけるようになる。

2021年
成河(私)×福士誠治(彼)  ピアノ伴奏:朴 勝哲
ウインクあいち
再演が嬉しすぎて、母を連れて観に行く。母もたいへんな衝撃を受けていた。
やっぱり成河さんは狂気じみていて最高だし、それを受け止めるあるいは跳ね返す福士さんのスマートさも最高。そして成河さんと福士さんのバランスが良すぎることを再確認。身長差や体格差も、演技の質の違いも良いし、何より二人で歌うシーンの繊細さがとてもいい。

松岡広⼤(私)×⼭崎⼤輝(彼) ピアノ伴奏:篠塚祐伴
@オンライン配信
配信ではあるが、初めての他ペア観劇。ストーリーも歌も動きも同じなはずなのに、台詞の解釈や受ける印象が全然違ってびっくりした。若い二人というのもあって、「青い果実」という印象。あと可愛い。
実際の事件を起こした二人の年齢には近いはずだが、戯曲としてはある程度年齢を重ねた役者の方が合うのかもなと思った。

 

そして迎えた2023年、今回は2ペアを観劇。
巷ではスリル・ミーおたくは最初に観たペアを親だと思うと言われているが、私も完全に成福ペアに育てられたおたくなので、生で他のペアを観るということでとても緊張していた。

その結果、ものすごく面白かったし、いろいろ気がついたのでメモ。

 


10月14日@ウインクあいち
木村達成(私)×前田公輝(彼) ピアノ伴奏:落合崇史

開演のアナウンスなしに、開演時間が近づくとともに静かになっていく客席に「スリル・ミーってこうだったな」と思い出す。

ピアノの最初の音がダーーーンと響いて暗転して、緊張感が高まる。
翌日に朴さんのピアノを聞いてから思い返すと、すごく強いタッチで始まった気がする。

舞台下、客席から「私」が現れる演出にもドキドキした。


木村達成さんの「私」は、背が高くてシュッとしてて、「端正」という言葉が似合う。

前田公輝さんの「彼」は、意地っ張りで可愛く見えた。
木村さんの方が背が高かったから、見た目の印象もあるかもしれない。


全体的には、神経質×神経質な二人だな〜と思った。
私は彼に翻弄され、彼は彼で私にかき乱されているように見える。
意地っ張りで不器用な二人のぶつかり合いという印象。


声質もお二人とも硬質で芯があったから、台詞は聞き取りやすかったけど、歌はちょっとハモリが響き合ってないような気がした。
音程とかそういうのはよくわからないけど、歌も「ぶつかり合い」という感じ。

ものすごく対等というか、ちょっと前田彼が押され気味?

前田彼は、木村私の扱いにも手を焼いているし、父や弟との関係にも傷ついているようで、もがいて、あがいて…………その末に……というように見える。

一方で木村私は、彼の一挙一投足を気にしながらも、彼の心の一番弱いところの手綱を握っている感があった。


全体的に「私の知ってるスリル・ミーと全然違うぞ!?」って感じで、観終わった後は成河×福士ペアのスリル・ミーがもう一度観たくなった。

 


10月15日@ウインクあいち
尾上松也(私)×廣瀬友祐(彼) ピアノ伴奏:朴 勝哲

先に言っておくけど、このペアめちゃめちゃ好みでした。
成福ペアに解釈や雰囲気が似ていたからかもしれない。


開演の合図のピアノの一音目が優しくてびっくりした。
昨日の落合さんのピアノはスリリングだったけど、今日の朴さんのピアノは情緒的……。


尾上私、めーーーーーーーっちゃ可愛くて気が狂うかと思った。
待ち合わせに彼が現れたときのリアクションからフルスロットルで可愛いし、そのあとの拗ねや、後のシーンの懇願もめちゃめちゃに可愛い。

成河私も可愛かったけど、尾上私の方がさらにピュアで健気。成河私はもうちょいしたたかというか、あざとかった気がする。
そう思うと昨日の木村私は可愛げなかったな〜!可愛げないところが可愛い説があるので、もう一度木村私も観たくなる。

廣瀬彼は、まずスタイルが良すぎて、顔の小ささに驚いた。
あと声が!低い!ものすごく深みのある良い声!!!!


その低い声と高圧的な話し方からか、廣瀬彼は場を支配する力が凄かった。
尾上私がとにかく彼に服従していたのもあり、上下関係の強いペアのように思える。


尾上さんも廣瀬さんも、柔らかくて伸びのある声で、歌うと溶け合うように綺麗に響き渡るのも良かった。

 

そしてこのペア、色気が尋常じゃなかった。

まず廣瀬彼の指先のいやらしさがヤバい。
最初に気づいたのは序盤のキスシーン。軽い口づけから深いキスに変わって、最後に離れるときに指先がちょっと残って離れたのがいやらしくて「!?」と思ってたら、そのあともずっとやばくて……
「やさしい炎」の私の「触って」という懇願に応えて触れる場面とか、手を取って、腕を掴み、身体を引き寄せ……というその動きが、ゆっくりねっとり丁寧で、長い指先が私の身体を這うのがエロティックで………………直視できない……と思いながら目が離せなかった………………

尾上私は「スリル・ミー」の「さあ壊してくれ もっと強くもっと お願い!」の叫びが悲痛で…………切実で…………………ここでこんなに胸がきゅっと切なくなったのは初めてかもしれない。


変な話、このペアは本当にセックスしてる感があった。

 

そしてラストの99年。
それまで終始、彼が優位な関係が強調されていたから、微笑む私と打ちひしがれる彼の対比が美しかった。

成福ペアもどんでん返し感はあったけど、廣瀬彼の方が立場が上という印象が強かったからこそ、それをひっくり返されたときの落差と衝撃が大きい。

 

他ペアを見た結果、「やっぱり成福ペアが一番!」ってなるかもな〜と思っていたが、最終的には「スリル・ミー面白いぞ!?」に着地している。
こうなってくると松岡山崎ペアもチケット取ればよかった……とちょっと後悔。

 

これからもスリル・ミーが再演されたら絶対観に行きたいし、この状態でまた成福ペアが観たいとも思う。

あと音源が!ほしい!!!!!!!

スリル・ミー、恐ろしい芝居です。

 

 

 

『いつぞやは』を観て思い出したいつぞやの話。


10月9日(月) @森ノ宮ピロティホール
シス・カンパニー公演『いつぞやは』

【作・演出】加藤拓也
【出演】平原テツ 橋本淳 夏帆 今井隆文 豊田エリー 鈴木杏


を観てきた。
加藤拓也さんが作・演出をした舞台作品は2018年からだいたい観てるはずなんだけど、ここ数年の中では一番好きだったかもしれない。
「加藤拓也作品のこういうところが好き!」という気持ちでいっぱいになったし、今までの加藤拓也作品を観てきたからこそ響いたシーンがたくさんあった気がする。

そして、そういうの抜きにしても舞台としてめちゃめちゃ良かった。
演劇って良いな……と、しみじみ思った。


最近は観劇してもなかなかちゃんとブログに感想をまとめるということができてなかったんだけど、これはもう観終わった瞬間から「書きたい!書かねば!語りたい!」という衝動がぶわーっと湧いてきたので、書く。

以下、ネタバレとか気にせず、思いついたことをぱらぱらと。
感想とかレポというより、自分語りとか個人的な覚え書きになるかもしれない。

 

今年四度目の森ノ宮ピロティホール。今回の席は通路より数列後ろ。この会場は前方ブロックだと舞台の床と同じ目線になるので、これくらいの位置が個人的には一番見やすい。


舞台上は、無機質なパネルに覆われていた。
舞台美術を担当された方が模型写真をupされていたので引用しておく。
https://twitter.com/Kie_Yamamoto228/status/1711286935652872511?t=fh7hZb1bGeBDFu4ZgVskyQ&s=19

無彩色の空間からは、これからきっとここに登場する役者の肉体が映えるんだろうなという期待感がある。
あと、唯一置かれていたテーブルと椅子、絶対これを動かしながら場面転換するでしょと思ってたら本当にそうだったからちょっと嬉しくなってしまった。
テーブルと椅子は、加藤拓也作品の中で自由自在に姿を変え、印象的な役割をすることか多い。人々の中心となるものであり、ひっくり返したり重ねたり上に乗ったりすることで様々な表現ができる。


開演前のアナウンスが終わると同時に、客席に一人の男が現れた。

「こんにちは〜。飴くばってま〜す。飴いかがですか〜? あ、どうも〜、こんにちは〜。あ、飴、はい、ありがとうございま〜す。飴、いりますか? はい、どうぞ〜」

手に下げた小さな籠から飴玉を取り出し、観客に配りながら舞台へと向かっていく。

決して大きな声ではない。
むしろゆったりとリラックスした、気取らない雰囲気だ。

でもそれでいて、明らかな『非日常』がある。
というか「『演劇』が歩いてきた!!!!」という感じだった。

飴を配り、観客とコミュニケーションを取りながら舞台へと上がった男──松坂(橋本淳)は、その温度感のまま、観客に語り始めた。


「僕はいつも、観に来てくれたお客さんに、こうやって飴を配ります。何でかって言うと……僕が大阪生まれだからですかね」

橋本淳さんが客席に現れるのとほぼ同時に、舞台上には10人ほどの男女が現れ、ばらばらに腰を下ろしていた。

「あ、飴いかがですか〜? 大丈夫ですか? 飴…………いいですか?」

彼はその人たちにも飴を配ろうとするが、舞台上では誰もそれを受け取らない。

橋本淳の語りは続く。

「僕、死んじゃった友達がいて、あんまりSNSとかもやらない人だったんだけどインスタだけやってて、フォローもしてて、で、フォローの一覧とかこう見てるといるわけですよ、彼が。投稿とか見てると、なんだかその人の声が聞こえるような気がして。で、フォロー外そうかなとかも考えるんですけど、生きてる人が相手でもフォローするとかしないとか難しいじゃないですか、いろいろ。で、まあ結局外してなくて。そしたらこないだ、いつログインしたかとかわかるやつが、『数時間前』ってなってて、あれこれ連絡できるのかなとか思って、まあしなかったんですけどね、結局」

細かいところは忘れてしまったけど、だいたいこんな感じ。
肩肘張らない語り口は、2020年に同じく橋本淳さんが演じた『たむらさん』を彷彿とさせる。橋本淳さんのこのナチュラルなのに空間を一気に支配する語りがとても好きだ。
そして、今はもういない年上の友人との思い出を語るのは、『ドードーが落下する』に通ずるものも感じる。

 

橋本淳が観客に向かって話し終わると、周囲にいた男女がすっと立ち上がり、出口に向かった。
橋本淳は再び飴を配り始めるが、誰も飴を受け取らない。
これは橋本淳──じゃなくて、松坂の劇団の公演が終わったときなんだなと、すぐにわかる。


こういう役者の力量と観客の受け取る力を信頼した、シームレスな場面転換も大好きだ。

 

観客があらかた去ったあと、最後に平原テツが現れる。

「え〜!いちさん!来てたんですか!」
「来たよ〜、チケット取って来たよ〜。プレイガイドで、発売日に買ってさ」
「そんなの連絡してくれたらよかったのに」
「いや、それはさ、買いたいじゃない普通に」
「そこでお金払うんだから一緒ですよ」

平原テツ演ずる一戸(いちのえ)は、松坂の昔の演劇仲間らしい。

そして演劇仲間の舞台を観に行くときも普通にプレイガイドでチケット取って何も言わずに行きたい気持ちめちゃめちゃわかる。私もよくやる。
コロナ禍前は終演後のロビーで「来るなら言ってよ〜!」と言われていたが、コロナ禍で劇団員のお見送りがなくなってからは会わずに帰ってSNSで「来てたの!?」と言われることも多かった。
自分が今はそんなに演劇やってないから、遠慮してしまう部分もあるのかもしれない。なんか「連絡していいかな〜。でも、ずっと会ってないのに関係者ヅラするのもあれだしな〜。あと、普通に観客として行きたいしな〜」みたいなことを考えて、何も言わずに行って帰ってきてしまう。

だからそのやり取りだけで「この二人は昔は一緒にやってたけど今はちょっと疎遠で、松坂の方はがっつり劇団やってるけど、一戸の方は演劇から遠ざかってるんだな」というのもすぐにわかった。


そして一戸は、もうすぐ地元の青森に帰ること、その理由が病気(大腸がんのステージⅣ)であることを、松坂に打ち明ける。

病気、しかもかなり深刻な状態であることを知らされたときのリアクションは、いったい何が正しいのだろうか。

松坂も「あっ、そう……そうなんですね〜」みたいなリアクションしかできず、一戸は一戸で「そんな顔しないでよ〜」と明るく努めようとするが、どこか居心地の悪さのようなものを感じる。


それは、昔の演劇仲間と集まったときも同じだった。
居酒屋に集まる5人の男女。
一戸が地元に戻る前に久しぶりに会うことになった仲間たち。

企画したのは、松坂と坂本(今井隆文)で、この二人は一戸の事情を知っている。
でも、小久保(夏帆)と大泉(豊田エリー)は何も知らなくて、無邪気にはしゃいだり茶化したりする。

この温度差や、そこでの坂本の空回りっぷりも、観ている分にはとても面白い。
ていうか坂本がほんとに、悪い奴じゃないんだけど喋るたびになんかちょっと変な空気になるというか、こういう人いるし、こういうことあるよな〜と思う。


一戸が大腸がんのステージⅣだと話したときの女性二人のリアクションはやっぱりなんだか居心地が悪くて、そんな気まずい空気の中で一戸が「俺、大腸も切ってるからね」と切った大腸をひょいと持ち上げたことに思わず笑ってしまう。
加藤拓也作品の、手触りのあるリアルなやり取りの中に、突然明らかにニセモノの小道具が出てくる“遊び”が好きだ。『ぽに』のおもちゃの腕や、『ドードーが落下する』のおじいさんや内臓みたいなやつ。


そして、居酒屋で元演劇仲間の男女が集まって、男の一人は大腸がんで、女の一人は妊娠してて……って、設定が『かつて我々』と一緒だな〜と思ってたら、本当に『かつて我々』が始まってうわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!?!となってしまった。

いや、『かつて我々』そのまんまじゃないんだけど…………そのまんまじゃないんだけど、営業前の昼間の居酒屋を借りて、テーブルの周りをぐるっとお客さんが囲む形で……って、それ『かつて我々』じゃないですか…………

 

一戸は松坂に「俺で脚本書いてよ」と頼む。
松坂は曖昧に笑って流す。
坂本は、「もう一度やろう!演劇!」と熱弁する。

そんな飲み会でのやり取りから、すっと切り替わったかと思うと、次の瞬間には演劇の稽古になっていた。


先ほどまでの飲み会の最初の会話がそのまま台詞になっていてシーンが再現される。
でも、言葉が完全に「台詞」の言い方になっていて、人と人との距離感も等間隔で、いかにも稽古始めたてな雰囲気で、すごかった。
下手な演技の演技って本当にうまくないとできないと思うんだけど、こっちがそわそわしてしまうくらいリアルだった。

そして言い出しっぺの坂本が一番演技が下手で面白い。
本番になっても絶妙に下手。

あと、本番で台詞飛んだときの空気感もリアルすぎて変な汗かく。
でもそういうのも含めて演劇って面白いし、本番っていいよなと思える。

一戸は病気だし、大泉も妊娠中で、このタイミングでできて本当に良かったと言いながら、仲間たちはまたそれぞれの生活に戻る。

 

このあたりには、一戸がちょっと危なっかしい人だなという印象が強くなっていた。
演劇やめてからはエアコンの工事の仕事をずっとしていて、でも病気で続けられなくなったから少しでもお金を稼ごうと絵を描いてインスタに載せたり演劇の会場に飾ろうとしたりしていて、その時点でちょっと「大丈夫か?」という感じだ。

そして演劇の稽古中に、抗がん剤をやめて民間療法に切り替えたと明かす。抗がん剤が本当にきつくて、ひどいときは立っていられないほどだからやめたと語るが、その代わりにものすごく高額のハーブティーとかアロマとか、そういうのをたくさん試しているらしく、周りの皆も「お金ないのに?」「それ本当にきくの?」という反応だ。

青森に戻ってからは在宅でできる仕事がいいから、プログラミングの通信教育に申し込んだと言っていたが、それも「大丈夫か?」と思っていたら、やっぱり「俺にはちょっと難しくて……」と挫折していた。その代わりに始めたのが大麻の栽培で、おいおいおいおい!という感じだ。

ちなみに青森に戻ってからの話は、松坂・坂本とのビデオ通話なのだが、壁のパネルがぱかっと開いて通話が始まったのも面白かったし、別のところのパネルをぱかっと開けると乾燥大麻がズラッと吊るしてあったのも面白かった。

 

そして舞台は、一戸の地元、青森へと移る。

年老いた母親と共にスーパーマーケットを訪れた一戸は、そこで高校時代の元カノ・真奈美(鈴木杏)と再会する。

真奈美は子どもを連れていて、今はバツ2でシングルマザーをしているらしい。

 

この真奈美が……というか鈴木杏が、めちゃめちゃ魅力的だった。
つい最近、NHKのドラマ『大奥』(よしながふみ)で鈴木杏を観たばかりだったから余計にそう感じたのかもしれない。
とにかくパワフルで、エネルギーに満ちていて、なんだかいい女だった。(最高だなと思いながらと観てたら、そのあとに高校時代やギャル時代まで見せてもらえてもう本当に最高でした、ありがとうございました!)


真奈美は、一戸に、仕事中に自分の息子の子守をしてもらう代わりに、夕食を作って一緒に食べることを提案する。
真奈美と一戸は昔から家が近所で、親同士も付き合いがあるらしい。


そんな生活が始まったある夜、一戸は、真奈美が外出している間に大麻を吸ってしまう。
彼が日常的にそうしていたかはわからない。でも、痛みに耐えかねてのことだというのはわかった。


乾燥させた大麻の葉を紙で巻いて火をつけ、くゆらす。
するとあたりが怪しいピンク色に染まっていく。

ふわふわと、銀色のバルーンでできた人形が、浮かび上がる。


一戸は過去にトリップしていた。

鳴り響く音楽。中央でDJをする一戸。
制服姿の真奈美が現れ、一戸に話しかける。

これは米軍基地近くのクラブか。
そういえば一戸は、昔、米軍から金属片を盗んだようなことを話していた。
母親を連れてクラブに行ったことも、真奈美と話していた。

「ほんとに行っちゃうの?」
という会話をしていたのもこのシーンだっただろうか。
一戸は間もなく高校を卒業して上京するらしい。


クラブミュージックの重低音に合わせて、人形を持った人たちがめちゃめちゃに踊り回る。
色とりどりのボールが宙を舞い、乱痴気騒ぎが繰り広げられる。

このあたりは、ちょっとハイバイの『再生』を思い出しながら観ていた。


やがて、踊っていた人々がフードを脱ぐ。
それは東京で一緒に演劇をやっていた仲間たちだった。


そこに、今度は華奢なデニムを履いた真奈美が現れる。
一度目の結婚の直後らしく「ギャルママ目指しま〜す♡」と指輪を見せつける。

そのまま東京の演劇仲間たちの中に入っていくのが、夢の中らしさを際立たせる。
よく夢の中で、接点のないはずの昔の友達と今の友達が同時に出てくるあの感じ。

一戸は真奈美に「あいつらに会ってほしい」と言っていたから、実際には会ったことがないはずだ。
そういえばこの「会わせたい」という話は「俺の葬式に来るだろうから」というところに着地するのだが、「葬式」というワードを出さなくてもそれが伝わってとても切なかった。

 

このトリップは、一戸の良い思い出の寄せ集めなのだろう。
自分が輝いていた頃、自分が大好きな人たち、めちゃめちゃに踊って、盛りあがって…………楽しい場面なのに切ないのは、これが幻覚だとわかっているからだ。

 

帰宅した真奈美は、キマってしまっている一戸を見つける。
「吸ったのォ!?」と驚きながら叱ってくれる彼女が愛しい。

一戸の嘔吐したものを拭き、散らかりっぱなしの人形やボールを手際よく片付けていく真奈美からは、愛を感じる。

一戸のそばに、彼女のような人がいてくれて良かったと思う。

 

そういえば加藤拓也作品には嘔吐する場面もよく出てくるのだが、吐瀉物が勢いよく床やテーブルにぶち撒けられる光景に、不思議な爽快感が伴う気がしている。
そもそも、全てを言葉にする人ではないから、その分、勢いよく吐き出す行為によってすっきりするのかもしれない。

 

一戸は、自分の死期が近づくに連れて、後悔を覚えるようになった。
上京前にたいしたことない体調不良だと思っていた父親は、がんで亡くなった。そのことを今になって思う。
もっと演劇もやりたかったし、結婚だってしてみたかった。

そんな一戸に、真奈美は「今からでもやればいいよ!」……みたいなことを言っていたはずなのだが、細かいところを忘れてしまって悲しい。

 


そして舞台は東京に戻る。

久しぶりに会ったらしい松坂と坂本。

「まっつん、最近いちさんと連絡とってる?」
「いや、全然……」
「結婚したらしいよ」

という会話で、一戸と真奈美が結婚したことがわかる。
そこに、真奈美から電話がかかってくる。

軽いノリで電話に出た坂本だが、その顔はすぐに曇る。

「そ……う、ですか…………それは、あの………はい、はい………」


訃報だ。


直接的な言葉は何もない。
真奈美の声が聞こえるわけでもない。

でも、一瞬でそれが理解される。
俳優の身体から発された悲しみは、ひたひたと空間を覆う。


坂本から電話を渡され、松坂も真奈美と言葉を交わす。


ずっと仲間に会わせたいと言っていたいちさん。
最後に一緒に演劇ができたことを、何度も話していたいちさん。
またやりたいと言っていたいちさん。
自分を脚本にしてほしいと言っていたいちさん。

そのいちさんは、今はもうこの世にいない。

 

松坂は、静かに机に向かい、原稿用紙に何かを書き始める。
あのときのいちさんとの会話を。彼の物語を。


そして唐突に暗転して、舞台は終わる。


突然ふつりと暗転する終わり方も、加藤拓也作品ではよくある。
私はこの投げ出されるような、投げかけるような演出がとても好きなのだが、今回はとくにそれが響いた。

暗転して、明転して、頭を下げるキャストに拍手をしながら、私はなぜか嗚咽していた。
そのまま終演のアナウンスが流れてきても立てないくらい泣けてきて、自分でもびっくりした。

 

そろそろ物語が終わる予感はあった。
そしていつものように突然終わるんだろうなという覚悟もしていた。

でも、あまりにも突然の、そして呆気ない終わりは、まるで人間が死を迎える瞬間のようで、それが一戸の物語の終わりと重なって、なんだかもうたまらなかった。


芝居の序盤で、松坂は、一戸たちの会話をそのまま脚本にしてみんなで上演した。
今、私が観た『いつぞやは』も、一戸たちの会話をそのまま脚本にして上演したもので、入れ子構造というかメタフィクションというか、まあとにかくそういう構造のものだと理解はできる。

でも、その上で、どうしてこんなに私が衝撃を受けているのか考えてみると、松坂と一戸の『いつぞやは』だけでなく、私と加藤拓也作品ないしは私と演劇の『いつぞやは』がそこに詰まっていたからだと思う。


観ながら、『いつぞや』の記憶が次々訪れた。

橋本淳さんを初めて観たのは『在庫に限りはありますが』だったなとか、橋本淳さんのナチュラルな語りで始まるのは『たむらさん』と同じだなとか、そういえば『たむらさん』では橋本淳さんと豊田エリーさんが夫婦役だったけとか、平原テツさんが病気でちょっと不安定でって『ドードーが落下する』ぽいなとか、平原テツさんを最初に観たのは『誰にも知られずに死ぬ朝』だったと思うけど、そこで出てた安達祐実さんとこないだ『綿子はもつれる』では夫婦役だったんだよなとか、とか、とか。


ところで、主人公の名前が「松坂」で仲間からは「まっつん」と呼ばれてるのって、完全に『貴方なら生き残れるわ』と同じなんですけど、これっていったいどういうことなんですか???
加藤拓也さんの中では、誰かの物語の傍観者あるいは語り手ポジションは「まっつん」なの????????
ちなみに私は『貴方なら生き残れるわ』でたいへんな衝撃を受けて加藤拓也ファンになったおたくです(突然の自己紹介)。


あと、劇中で一戸が芝居の稽古をしながら「一応さ、代役とか頼むね」と話していてドキッとした。
そもそも平原テツさんは、怪我で降板された窪田正孝さんの代役なんだけど、そんな役にこの台詞言わせるのすごくない????ていうかこわくない????????

そして欲を言えば、窪田正孝さんバージョンもとても観たくなった。平原テツさんがめちゃめちゃ良かったからこそ、余計に。


個人的には、加藤拓也さんは、役者の本質を捉えて「これしかない!」って役をやらせる人だと思っているから、窪田正孝ファンの人に加藤拓也作品の窪田正孝さんを観てほしかったみたいな立場のよくわからない謎の気持ちもある。


だんだん何が言いたいかよくわからなくなってきた。

なんかめっちゃ自分語りしちゃったし、観ながらぼんやり「あ〜、これどこかで……」と思ってたことが観終わってしばらく思い返したり感想書いたりしてる中で次々繋がってきて書きたいことがどんどん増えちゃったんですけど、やっぱりそれも含めて『いつぞやは』ってことですか!?
過去の加藤拓也作品と繋がってるように感じるのも『いつぞやは』だから???? そしてそれを観てた分だけ、観客にも『いつぞやは』が生まれるってこと?????????

 

いつぞやの、加藤拓也作品の感想は、このブログのどこかにあるので、気になる人は適当に探してください。

 

終わり。

舞台『ダブル』が、演劇好きの演劇好きによる演劇好きのための演劇で最高だった話


4月2日(日)@紀伊國屋ホール
『ダブル』

原作:野田彩子
脚本:青木豪
演出:中屋敷法仁
出演:和田雅成、玉置玲央、井澤勇貴、護あさな、牧浦乙葵、永島敬三

を観てきた。

演劇漫画が、原作にも舞台として登場した紀伊國屋ホールで舞台化するという、メタな作品。
私は元々原作のファンで早く舞台化しないかな〜と思っていたから発表の時点で嬉しくて嬉しくて、その上、脚本も演出もキャストも絶対に間違いない布陣だったから、もう期待値エベレストくらいで行ったけど、本当に本当に良かった!
毎回、原作最新話更新のたびに屍になってるおたくだから、舞台でも殺されるかもしれんと思ってたけど、「演劇大好き!ダブル大好き!みーんな好き〜〜〜〜〜!!!!」って気持ちでいっぱいになって帰ってきたので、安心して観ていいやつです。


以下、ネタバレありの感想書き散らし。
レポにもならないような個人的な覚え書きと解釈の整理。

 

 


紀伊國屋に到着した時点で、至る所に貼ってあるポスターにテンションが上がる。

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一階のガラスケースに今回のポスターと野田彩子先生の描いた『初級』のポスターが並んで漫画原稿と一緒に展示されててテンションが上がる。

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4階に上がるとホールの床が漫画の通りでテンションが上がる。
さらに今回の出演者の写真が並んでいて、漫画原稿もたくさん展示されていてテンションが上がる。


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もう観る前からテンション上がりっぱなし。

 

初日に観に行った友人からの情報で、開幕が『熱海殺人事件』だという話は聞いていたので、事前に『熱海』の冒頭だけ戯曲を読んでから行った。(※webで無料公開されてます)

 

噂通り、白鳥の湖と共に幕が上がる。
白い壁の、ロフト付きの1LDKらしき部屋。そして奥から現れる多家良と友仁。彼らが運んでいるのはぶら下がり健康器。

多家良の新居への引っ越しだ!!!!!!!!!!

なるほどここから始まるのか〜というのが最初の感想だった。
原作のどこからどこまでをやるのかが一番気になってたから、多家良のひとつの転換点である引っ越しから始まっているのは納得がいく。

白鳥の湖は、多家良の携帯の着信音だ。
すかさず友仁が「『熱海』かよ」とツッコミを入れる。

つか作品を知ってる観客が「紀伊國屋ホール白鳥の湖で幕が上がるって『熱海』かよ」と思っていると、舞台上で「『熱海』かよ」と言ってくれる気持ちよさ。

あとその直後に多家良と友仁が「え?」「え?」「え?」「え?」と一切の間なしに重ねるの大好きありがとう中屋敷法仁〜!!!!
そもそも、大の大人が二人してぶら下がり健康器を運んでいるだけで面白くて、幸せ最高ありがとうマジでみたいな気持ちになる。

 

和田雅成さんの多家良は顔がとにかく可愛い。「んっ?」てちょっと顔を突き出して聞くのがとくに可愛い。

玉置玲央さんの友仁は、なんかもう友仁だった。あれは友仁。あと声がめちゃめちゃ気持ちよく響いて、耳が幸せだった。口が大きくて喉が広い感じがしてとても良い。
和田さんの声がダメなわけではないんだけど、玉置玲央の響きのある発声を浴びてしまうと「がんばって!」と思ってしまう。普通に話してるときは気にならないけど、大きな声を張り上げるときと、小さな声で話すときに、玉置玲央さんが凄すぎて……

身体の質感は、個人的な好みだと和田多家良と玉置友仁が逆だとよかったな〜と思った。
和田多家良はちょっと猫背で身体が板っぽくて、玉置友仁は柔らかくよく動いたんだけど、私の中では友仁さんが板っぽい直線的な肉体で、多家良がよく動く柔軟な肉体のイメージだった。

 

舞台ダブルは、多家良の部屋にいろいろな人が訪れることで話が動いていく。
最初にやって来るのは、劇団の先輩である飯谷だ。

正直、キャスト発表されたときは「飯谷って誰だよ!」と思っていた。原作漫画には本当にちらっとしか出てこないし、野田彩子先生もそう言ってたから許してほしい。

さて、その飯谷だが、完全に永島敬三だった。
もう登場した瞬間から永島敬三。顔も動きも「ひゃくまんえん!」の言い方も永島敬三。もうただの永島敬三。ていうか、「小劇場にいる役者」の概念の具現化。
玉置と永島のいる劇団はそれはもう柿喰う客なのよ……劇団英雄=柿喰う客説。

そしてこの飯谷がな〜んもわかってないキャラのおかげで、「飯谷に説明する」というテイで、ここまでのあらすじが観客に示される。しかもそれがコミカルでテンポ良く、観てて気持ちいい。

 

さらに友仁が買い出しに出て行って、多家良と飯谷の二人になったところに、轟九十九が来る。

井澤勇貴さんの轟九十九は、目元の濃さとゲーノー人っぽさがめちゃめちゃ良かった。

そして多家良も出て行き、なんとなく気まずくなる九十九と飯谷〜!こういう絡みない人が残されて変な空気になるのも大好き〜!


そのあと登場する冷田さんや愛姫ちゃんも、原作イメージまんまで最高。
護あさなさんの冷田さんは凛とした佇まいと、声がとても良い。きりっとしてるのに怖さはなくて、多家良のために尽力してくれてるのが伝わる。
牧浦乙葵さんの愛姫ちゃんは髪の毛さらさらでお顔が可愛くて元アイドルっていう説得力がありすぎた。ちょっとした仕草も、あざとすぎず、でもチャーミングで、とっても可愛い。後から調べたら、牧浦さん自身もアイドルとして芸能界に入って今は舞台で活動してる方だった。

 

冒頭から好きな演劇が詰まりすぎてて最高。
出てくるキャストも原作のイメージ通りで魅力的で最高。
そして皆ずーーーーーっと演劇の話をしてるのも最高。


とくに友仁さんが戯曲の名前をばんばん出してくる。当たり前のように周囲もそれに反応する。
そういえば冒頭の熱海の話だけど、多家良、つかこうへい知ってるんだな!?

今やってる芝居のワンシーンをその場で演じたりもする。
そういうとき「ちょっとムーディにするわ」って部屋の電気のスイッチで照明切り替えるのずるくない?


観客に理解させる気があるのかないのかわからないような演劇ネタが連発されるけど、そういう自分たちにしかわからない話をしまくるのも演劇人あるあるで観てて楽しい。

 

たぶん知らなくても楽しめるんだけど、私が観といて良かったと思ったのは、やっぱり『初級革命講座 飛龍伝』だった。
私は今年の2月にスズナリでやった『初級』を観たんだけど、昨年7月に紀伊國屋ホールでやった『初級』を観た人も多いと思う。

漫画ダブルと『初級』については、詳しい人がめちゃめちゃ丁寧なブログを書いてくださっているので、これを読むとかなり理解が深まると思う。

多家良と九十九と愛姫ちゃんが『初級』をやると決まったとき、冒頭のショーを丸々やるんだけど、本当に『初級』そのまんまでちょっと感動した。
ダブルの原作で『初級』の幕が上がったら、このキャストで『初級』やりませんか? 普通に井澤勇貴演ずる轟九十九演ずる山崎の『初級』も観たいんですが???

 


舞台のストーリーは、多家良の引っ越しから始まり、声の喪失と再獲得を経て、『初級』の稽古中で終わる。

原作漫画では多家良と友仁が『初級』を一緒にやるのが大きな転機になっていたけど、舞台ダブルではシチュエーションが多家良の部屋という特性上、『初級』の稽古場は描かれず、華江さんや黒津監督も名前しか出てこない。なんとなく「ダブル読んでるなら『初級』はわかれ!感じるだろ、このヤバさ!」みたいな何かもあった気がする。
でもたぶん、原作の漫画ダブルか、つか作品か、どちらか片方に触れてれば大丈夫だと思う。演劇好きが演劇好きのために作った演劇好きの舞台って感じ。

 

舞台ダブルの、舞台ならではの演出はだいたい好きだったんだけど、個人的にプロジェクションマッピングはなくても良かったのではないかという気がする。
紗幕に映像を写すのはいいとして、舞台装置の壁に絵を写す方。それがなくても役者の凄みは役者からちゃんと伝わるし、もうちょっと俳優を信じて任せてもよかったんじゃないかな〜という印象。

あと私は、原作の多家良が失った声を取り戻すところがとても好きだから、そこの描き方はちょっと不満だった。
語りながら取り戻すのは良かったけど、「あーえーいーうーえーおーあーおー」ってしながら歩くのやってほしかったな〜。
いっそのこと、舞台を降りて客席を彷徨ったりしてもよかったんじゃないだろうか。ロフトでの一人語りからアパートを飛び出すところ、舞台上の部屋の約束を破ってたから、それなら客席降りも許されたし、外を歩きながら声と共に自分自身を取り戻すっていうのが肝だと思うから、「“外”を歩く」っていうのをシーンとして見せてほしかった。


観終わってから気になったのは、「水」の扱いについて。

とくに顕著だったのは、愛姫ちゃんが多家良の部屋に訪れるシーンと、友仁が多家良の部屋に訪れるシーンの対比。

声を失った多家良の部屋に来た愛姫は、電気ケトルで湯を沸かして二人分のコーヒーを用意し、自分だけそれを飲む。
そんな愛姫に多家良は頬を寄せ、愛姫は多家良の手を引いて二人はロフトに上がる。
(余談だが、私は原作のこの場面の、幼い二匹の動物がじゃれ合っているような無邪気さが大好きだから、舞台でもこの二人の睦み合いがいやらしさのない暖かいもので嬉しかった)

そして終盤、『初級』の稽古から逃げ出して戻ってきた多家良の部屋に訪れた友仁も、電気ケトルで湯を沸かして、焼酎のお湯割りを作る。


逃げて、逃げて、もがいている多家良。
電気ケトルで湯を沸かす。
二人の会話の密度が高まったところで湯が湧く。
二人分の飲み物を用意する。
でも、多家良はそれに口をつけない。
かわりに多家良は手を伸ばす。

愛姫はそんな多家良を受け入れる。
友仁は、受け入れない。

 

思えばこの舞台は、皆よく何かを飲んでいた。

愛姫ちゃんが「この部屋、乾燥してるね。加湿器とかないの?」というところは原作にもあるけど、もしかしてここを起点に戯曲にするとき、多家良の「渇き」を表現した?

そういえば多家良が声を失って、無言劇ならできるのではという話題になったときに、友仁が熱く語る戯曲「水の駅」は、舞台の真ん中に水道があって、そこに次々と人が現れる芝居らしい。

(戯曲デジタルアーカイブhttps://playtextdigitalarchive.com/drama/detail/532 )

『初級』の山崎役の交代について九十九と話しながら、友仁はベランダの植物に水をやっている。九十九が最後に「頼むわ」と言い残して部屋を去ると、突然、雨が降ってくる。
友仁は「水、やらなくてよかったな」と呟き、そのまま雨音の中で『初級』の山崎の台詞を読む。

友仁の「水やり」は、多家良を見出して身の回りの世話をしながら演劇をやっていたことの暗喩か?
降り出した雨は、『初級』を多家良と友仁が演じることによって、何かが変わることを示している?

『初級』の中で、山崎が小夜子と出会うのは雨の日だ。
降りしきる雨の音で、それを連想したのは私だけではないと思う。

 

でも、友仁は多家良を受け入れない。

友仁の手を握り、ずっと抱えていた「秘密」を、言うなれば「公然の秘密」を口にしようとする多家良を、友仁は拒絶する。言葉を遮り、唇を塞ぎ、それでも溢れ出る多家良の想いを、友仁は決して受け入れない。
絵面だけ見たら濃厚なキスシーンなのに、明確な「拒絶」だとわかって哀しい。


ただ、一緒に「演劇」をやりたいだけなのに、どうしてこんなにうまくいかないんだろう。
でも、この二人は「演劇」でしか繋がれないし、わかり合えない。

 

ラストシーン、二人で炬燵に並んで入り、多家良は言う。
「どうしたら世界一の役者になれるんだろう?」

友仁は答える。
「人の気持ちがわかるようになればいいんじゃないか?」


「俺、無理だよ、友仁さんの気持ちわかんないもん」
「俺だってお前の気持ちがわからないよ」
「わかってたじゃん、俺の気持ち」
「そりゃ一部はわかっても、全部は無理だよ」


そして多家良は呟く。
「世界一の役者になりたい」

 

…………この文脈で言うと、意味合いが変わってこないか?

この話の流れだと、多家良の言う「世界一の役者になりたい」は、「友仁さんの気持ちがわかるようになりたい」とイコールにならないか?

でも、原作の「一緒に世界一の役者を目指そう」っていうのも、ある意味「俺はお前を理解し、お前は俺を理解し、みんなにそれをわからせてやろうぜ」ってことだから、それでいいのか?

 

そんなことを思ってラストは情緒がぐちゃぐちゃになった。

 

あと曲!
多家良がサブスクで適当に選んだプレイリストが「川沿いを散歩」だったけど、原作でこのくだりのあとに二人が川沿いを歩く話あるじゃないですか……そういうこと????

 

観終わったあと、いろいろ話したい気持ちでいっぱいになったけど、相変わらずぼっち観劇だった私はすべてをここに記して寝る。

思い出したらまた書き足します。

 

【2023/04/03追記】

舞台ダブルを観てから一晩たって、パンフも読んで、いろいろ思い出したから、もうちょっと書く。

私が観に行った4/2(日)夜の回、和田雅成さん演ずる多家良が『初級』の冒頭をやるシーンで、熊田の台詞を噛んでしまった。

それ自体は観ながら「あ、噛んで言い直した」とすぐ気づいたし、まあそういうこともあるよな残念だけど……と思ってたけど、印象的だったのはそのあと。

井澤勇貴さん演ずる九十九が、それを弄った。
「噛んだとこ、もっかいやるか?」

和田雅成さん、というか多家良は「あ〜〜〜〜〜〜噛んじゃった……友仁さんの前で〜〜〜〜〜!」と呻いて両手で顔を覆う。
周囲は笑って「まあまあ、本番じゃないから!」と慰める。

いや、本番なんだけど!舞台ダブルは本番なんだけど! でもそのときの空気が本当に自然で、「役者」ではなくて「役」のままで、それが本当に良かった。

本番中に役者がアドリブを挟むことは珍しくないけど、私はその瞬間に「役」でなくなると一気に冷めてしまう。 舞台ダブルはそんなことなかった。むしろ「噛んだ」という事実をそのまま受け止めて会話に反映させる自然さがそこにあって、私はここで「あ、みんな“本物”だ。板の上で生きてるんだ」と思った。

 

人は誰もが役者だとシェイクスピアは言った。

舞台上の登場人物たちは板の上でしか生きられないが、役者という生き物もまた、板の上でしか生きられない。
「役」なのか「役者」なのかを超えて、舞台上にいる肉体を伴った彼らが、そこに生きてる感覚がとても良かった。

 

パンフを読んでも、俳優たちが演劇を愛してるのが伝わってきて胸がいっぱいになった。
パンフは写真多めだけど、役者さんの個人コメントが全員同じ分量(1ページ分)載ってて嬉しい。もちろん写真も全部めちゃめちゃ良い。

 

最後に、本編とあんまり関係ないけど忘れたくないことだけ、メモしておく。

・飯谷が本当に良い。中盤には飯谷が現れるだけで笑いが起きていた。あとマジでこういう人は演劇業界にいる。
・九十九さんが「どうせ俺らは福神漬」というシーンで赤い上着を着てたから、ちょっと面白かった。
・どこのシーンか忘れたけど、多家良が突然大きな声を出すところがあって、それがめちゃめちゃ多家良で好きだった。
・愛姫ちゃんの初登場シーン、廊下から聞こえる声だけでドキドキしちゃった。
・小道具忘れて手刀で続けた話に触れられた友仁さんが「わーーーーーーーーー!!!!!!!!」って突然大声出すの超良かったし、そのあとの奇行にもめちゃめちゃ笑った。
・『初級』の台本を二人で読んでる多家良と友仁の空気を読んで、そっとトイレの戸を閉める轟九十九。
・公式のwebアンケートで「印象に残ったシーン」を聞かれて、ものすごく迷ったけど私は、友仁が多家良に「お前は俺とお前は俺とセックスがしたくて一緒にいたのか? 俺に愛してほしくて芝居を始めたのか?」と問うシーンを選んだ。

【追記おわり】

 


舞台ダブルは配信もある!!!!
みんなで観て「演劇楽しい最高」を浴びよう!!!!!!!!!!!

■配信サイト:streaming+
https://eplus.jp/st-double/
 
■販売価格:3,800円(税込)
 ※ライブ配信アーカイブ配信付

■2023年4月9日(日)18:00公演
見逃し配信期間:~4月15日(土)23:59
販売期間:2023年3月30日(木)18:00~4月15日(土)20:59


おわり。

 

2022年観たもの行ったものまとめ


あとちょっとで2022年終わってしまう!うわ〜!!!!
というわけで、恒例の一年振返りメモです。


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ライブ参戦

●0109*sukida dramas@名古屋
●0416*OOPARTS2022@岐阜
●0417*OOPARTS2022@岐阜
●0501*sukida dramas@名古屋※延期
●0911*9mm Parabllum Bullet@名古屋
●0925*中津川ソーラー武道館
●1029*twinpale@名古屋
●1218*sukida dramas@名古屋
●1231*SUPER DISCO Hits13!!!〜COUNTDOWN DISCO!!! PARTY〜(the telephones/THE BAWDIES/9mm Parabellum Bullet/四星球)@東京

(現地8本)

少ない!!!!
ほんとは行きたかったけど行けなかったやつはいっぱいある!!!!!!!
本数は少ないけど、そのうち三本はフェスだから、観たバンドの数としてはそれなりにあるかな?

最近の変化は女の子アイドルちゃんの推しができたことかもしれない。
twinpaleっていう二人組なんだけど、めちゃめちゃ可愛い。
そしてアイドル現場のお作法に不慣れすぎて、初めてライブハウス行く人みたいになってる。チェキ文化とかしゅごい……。

そして今日はZeppダイバーシティにいます。
telephones主催のカウントダウンイベントダイバーシティで年越しするの3年ぶり!好きなバンドしかいない!楽しみ!!!!
夜ダンが出演キャンセルになっちゃって悲しいんですけど、その代打出演がtelephones(2005-2008)でテンション上がった。私が一番聴いてた時期なのでは?
久しぶりのライブハウスでの年越し楽しむぞ〜!!!!

 


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舞台観劇

●0123*安住の地「¡play!」@金沢
●0130*MURDER for Two@大阪 ※譲渡
○0223*NODA·MAP「フェイクスピア」配信
●0403*シス・カンパニー公演「もはやしずか」@東京
●0731*シス・カンパニー公演「ザ・ウェルキン」@東京※譲渡
●0731*命を弄ぶ男ふたり@東京※中止
●0918*安住の地「犬が死んだ、僕は父親になることにした」@豊岡
●0918*安住の地「丁寧なくらし」@豊岡
●0918*ルサンチカ「GOOD WAR」@豊岡
●0923*劇団た組「ドードーが落下する」@横浜
●1022*忍ミュ第12弾再演@東京
●1023*レオポルトシュタット@東京
●1030*レオポルトシュタット@東京
●1126*建築家とアッシリア皇帝@東京
●1126*うさぎストライプ「かがやく都市」@東京
●1210*夏の砂の上@名古屋
●1217*命を弄ぶ男ふたり 表@東京
●1217*命を弄ぶ男ふたり 裏@東京
●1217*安住の地「凪げ、いきのこりら」@東京

(現地15本+配信1本=計16本)


観劇はすごく充実した一年だった気がする。
ここには書かないけど、高校演劇も合わせるとプラス60本くらい。
どれもすごく満足感のある感激体験だった。

心残りは感想ブログを全然書いてないこと……。
誰かと一緒に観に行くことも増えて、その場で喋って満足してしまっている部分もある……。

ちなみにチケット譲渡が2件あるけど、1/31のマダフォは流行り病の影響で職場的にちょっとむずかしくて、泣く泣く諦めた。
7/31のウェルキンは、仕事になってしまって行けなくなったので、高校時代の演劇部の後輩に譲った。チケ代の代わりに感想をもらったんだけど、感想聞けば聞くほど観たかった……と思う。

来年はすでに観劇予定パズル状態でわくわくだ〜。
東京遠征の予定が多めだから、もうちょっと名古屋の演劇界隈も開拓したいな。


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映画鑑賞 (●劇場 ○配信)

○0129*サウンド・オブ・メタル
○0205*アルキメデスの大戦
●0212*ドライブ・マイ・カー
○0213*暗数殺人
●0430*ファンタスティックビースト
○0522*エクストリームジョブ
○0612*トップガン
○0619*トップガンマーヴェリック
●0725*トップガンマーヴェリック4DX
○1001*ウィリーズワンダーランド
●1119*RRR
●1123*すずめの戸締まり
●1230*THE FIRST SLAM DUNK

(劇場6本+配信7本=13本)

全部すごく面白かったけど、印象深いのはトップガン新旧とRRRとSLAM DUNK!!!!
全部音響もめーっちゃかっこ良くて、映画館で観るの最高だなと思った。

トップガンマーヴェリックは、事前に無印を観てから行って大正解だった。たぶん観てなくても楽しめたけど、前作のオマージュ部分とかもわかってすごく良かった。これ昔からのファンの人は感動しただろうな〜。

RRRはインド映画なんですけど、ドバーーーーーンって少年漫画の見開きみたいなシーンばっかりで超楽しかった。
ストーリー自体は思ってたよりシリアスというか、イギリス統治時代のインドが舞台で、日本でいう時代劇みたいな感じだったんだけど、そういう歴史も全然知らなかったから勉強にもなった。
もう一回くらい映画館で観たかったな…………爆音上映とかしてほしい…………。

スラダン映画は、ついこないだ行ってきたんだけど、これも音の演出がめちゃめちゃ良かった。
まず漫画のあのカッコいい絵がそのまま動いてるだけでもカッコいいのに、バッシュやボールが体育館の床の上で躍動する音とか、シュートを放ってからゴールネットに入るまでの無音の間とか、そういうのが全部カッコいい。あと10-FEETの音楽が劇中で入るタイミングも最高。テンフィのライブでめちゃめちゃにモッシュしたくなる。


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野球関連

●0102*金子侑司トークショー@京都
●0525*西武✕中日@バンテリンドームナゴヤ
●1229*金子侑司・森脇亮介トークショー@埼玉

試合よりも金子のトークショーの方が多いの何事?
つい先日、金子森脇のトークショー行ったんだけど、二人とも顔が良すぎて、それ以外の記憶があんまりない。

来年は試合ももっと行きたいな。
涌井が中日に移籍したから、中日戦もたくさん行きたい!

 

 


以上、2022年に私を支えてくれたものまとめ!
もうすぐライブ始まる〜!

良いお年を!!!!