エモーショナルの向こう側

思いの丈をぶつけに来ます

『スリル・ミー』複数ペア見比べメモ


私のスリル・ミー歴

2019年
成河(私)×福士誠治(彼) ピアノ伴奏:朴 勝哲
@大阪サンケイホールブリーゼ
友人からヤバい舞台があるから観てくれと勧められ、初観劇。ななななななななんだこれはと衝撃を受ける。成河さんの狂気じみた演技と歌の巧さにやられ、それ以来、成河さんの出演作を追いかけるようになる。

2021年
成河(私)×福士誠治(彼)  ピアノ伴奏:朴 勝哲
ウインクあいち
再演が嬉しすぎて、母を連れて観に行く。母もたいへんな衝撃を受けていた。
やっぱり成河さんは狂気じみていて最高だし、それを受け止めるあるいは跳ね返す福士さんのスマートさも最高。そして成河さんと福士さんのバランスが良すぎることを再確認。身長差や体格差も、演技の質の違いも良いし、何より二人で歌うシーンの繊細さがとてもいい。

松岡広⼤(私)×⼭崎⼤輝(彼) ピアノ伴奏:篠塚祐伴
@オンライン配信
配信ではあるが、初めての他ペア観劇。ストーリーも歌も動きも同じなはずなのに、台詞の解釈や受ける印象が全然違ってびっくりした。若い二人というのもあって、「青い果実」という印象。あと可愛い。
実際の事件を起こした二人の年齢には近いはずだが、戯曲としてはある程度年齢を重ねた役者の方が合うのかもなと思った。

 

そして迎えた2023年、今回は2ペアを観劇。
巷ではスリル・ミーおたくは最初に観たペアを親だと思うと言われているが、私も完全に成福ペアに育てられたおたくなので、生で他のペアを観るということでとても緊張していた。

その結果、ものすごく面白かったし、いろいろ気がついたのでメモ。

 


10月14日@ウインクあいち
木村達成(私)×前田公輝(彼) ピアノ伴奏:落合崇史

開演のアナウンスなしに、開演時間が近づくとともに静かになっていく客席に「スリル・ミーってこうだったな」と思い出す。

ピアノの最初の音がダーーーンと響いて暗転して、緊張感が高まる。
翌日に朴さんのピアノを聞いてから思い返すと、すごく強いタッチで始まった気がする。

舞台下、客席から「私」が現れる演出にもドキドキした。


木村達成さんの「私」は、背が高くてシュッとしてて、「端正」という言葉が似合う。

前田公輝さんの「彼」は、意地っ張りで可愛く見えた。
木村さんの方が背が高かったから、見た目の印象もあるかもしれない。


全体的には、神経質×神経質な二人だな〜と思った。
私は彼に翻弄され、彼は彼で私にかき乱されているように見える。
意地っ張りで不器用な二人のぶつかり合いという印象。


声質もお二人とも硬質で芯があったから、台詞は聞き取りやすかったけど、歌はちょっとハモリが響き合ってないような気がした。
音程とかそういうのはよくわからないけど、歌も「ぶつかり合い」という感じ。

ものすごく対等というか、ちょっと前田彼が押され気味?

前田彼は、木村私の扱いにも手を焼いているし、父や弟との関係にも傷ついているようで、もがいて、あがいて…………その末に……というように見える。

一方で木村私は、彼の一挙一投足を気にしながらも、彼の心の一番弱いところの手綱を握っている感があった。


全体的に「私の知ってるスリル・ミーと全然違うぞ!?」って感じで、観終わった後は成河×福士ペアのスリル・ミーがもう一度観たくなった。

 


10月15日@ウインクあいち
尾上松也(私)×廣瀬友祐(彼) ピアノ伴奏:朴 勝哲

先に言っておくけど、このペアめちゃめちゃ好みでした。
成福ペアに解釈や雰囲気が似ていたからかもしれない。


開演の合図のピアノの一音目が優しくてびっくりした。
昨日の落合さんのピアノはスリリングだったけど、今日の朴さんのピアノは情緒的……。


尾上私、めーーーーーーーっちゃ可愛くて気が狂うかと思った。
待ち合わせに彼が現れたときのリアクションからフルスロットルで可愛いし、そのあとの拗ねや、後のシーンの懇願もめちゃめちゃに可愛い。

成河私も可愛かったけど、尾上私の方がさらにピュアで健気。成河私はもうちょいしたたかというか、あざとかった気がする。
そう思うと昨日の木村私は可愛げなかったな〜!可愛げないところが可愛い説があるので、もう一度木村私も観たくなる。

廣瀬彼は、まずスタイルが良すぎて、顔の小ささに驚いた。
あと声が!低い!ものすごく深みのある良い声!!!!


その低い声と高圧的な話し方からか、廣瀬彼は場を支配する力が凄かった。
尾上私がとにかく彼に服従していたのもあり、上下関係の強いペアのように思える。


尾上さんも廣瀬さんも、柔らかくて伸びのある声で、歌うと溶け合うように綺麗に響き渡るのも良かった。

 

そしてこのペア、色気が尋常じゃなかった。

まず廣瀬彼の指先のいやらしさがヤバい。
最初に気づいたのは序盤のキスシーン。軽い口づけから深いキスに変わって、最後に離れるときに指先がちょっと残って離れたのがいやらしくて「!?」と思ってたら、そのあともずっとやばくて……
「やさしい炎」の私の「触って」という懇願に応えて触れる場面とか、手を取って、腕を掴み、身体を引き寄せ……というその動きが、ゆっくりねっとり丁寧で、長い指先が私の身体を這うのがエロティックで………………直視できない……と思いながら目が離せなかった………………

尾上私は「スリル・ミー」の「さあ壊してくれ もっと強くもっと お願い!」の叫びが悲痛で…………切実で…………………ここでこんなに胸がきゅっと切なくなったのは初めてかもしれない。


変な話、このペアは本当にセックスしてる感があった。

 

そしてラストの99年。
それまで終始、彼が優位な関係が強調されていたから、微笑む私と打ちひしがれる彼の対比が美しかった。

成福ペアもどんでん返し感はあったけど、廣瀬彼の方が立場が上という印象が強かったからこそ、それをひっくり返されたときの落差と衝撃が大きい。

 

他ペアを見た結果、「やっぱり成福ペアが一番!」ってなるかもな〜と思っていたが、最終的には「スリル・ミー面白いぞ!?」に着地している。
こうなってくると松岡山崎ペアもチケット取ればよかった……とちょっと後悔。

 

これからもスリル・ミーが再演されたら絶対観に行きたいし、この状態でまた成福ペアが観たいとも思う。

あと音源が!ほしい!!!!!!!

スリル・ミー、恐ろしい芝居です。